| | novel

● ふたりの足跡 - アキハバラ1988 - --- 後編「みちしるべ」 ●

後編「みちしるべ」


 そうじろうさんとかなたさんが会計し終わったのを見計らって、私たちも会計を済ませて店を出る。
 まさか、こんな時におばあちゃんから貰った古いお札が頼りになるなんて……ほんと、感謝感謝。
 少し距離を取って二人を見てるのは変わらないけど、こなたのおかげで不安はすっかり解消。今はただ、二人とこなたを見守ってあげないと。

「あ、あの店に入るみたいよ」
 結局、日比谷線の駅のほうに戻ってきた二人は一軒のショップへと入っていった。
 さっきはまだ開いてなかったけど、ワシントンホテルの横にもショップがあったんだ。
「あのお店って……コム?」
「こなた、知ってるの?」
「うん、私が四歳か五歳のときに無くなっちゃったんだけど、ここにもよく連れてきてもらってた」
「そうなんだ。前通った時はパソコン教室があるなーって思ってたけど」
「もう辞めてから十年以上経っちゃってたからねー。ほらかがみ、行こ」
「うん」
 こなたに連れられて、私はそのコムっていう店に入っていった。

「うわ、知らないパソコンがいっぱい……」
 そこは私にとって『Bit-inn』以上にカオスな場所でした。ええ、十分カオスです。
 赤・黒・白・ベージュにクリーム色、灰色のパソコンが箱無しの状態で置かれてて、おまけにダイヤル式の黄色い公衆電話まで置かれてて……これ、普通に使えるのかな?
「うーん、どれもゴツくてでっかいやねー。私たちの時代じゃもうどれもビンテージモノだよ」
「そりゃ、十九年前だからそうだろうけど」
「ちなみに、これほとんど違うマシンだからソフトの互換性も無いよ」
「ウソッ?!」
「無い無い。X1もX68000もFM-77も8801も6601も9801も8201もMSXもぜーんぶ別物だから」
「うわー」
「いくつかマシン持ってた人なんか全部制覇してたし、続編が一個ずつ違う機種で出たり」
「絶対考えられないわ、それ」
 おかしい、絶対それはおかしい。私たちのいる時代じゃ絶対ありえないから。
「まあ、今はいくつかのOSといくつかのコンシューマーだけだもんねー」
「パワフルな時代だったのね、この時代って……うわ、値段もすごっ!」
 パソコン一台イコール諭吉さん五十枚なんて、絶対どうかしてるわよこの時代!
「今じゃこの十分の一の値段でも充分なのにねー」
「もう、見てるだけで疲れたわ……って、こっち来た!」
「うわっ!」
 精神的に疲れる暇もなく、かなたさんとそうじろうさんが店の奥からこっちのほうにやってきた。
 よし、客のふり客のふり。

「うーん……目移りするなぁ」
「だいたいの目星はついてるんでしょ?」
「ああ、確かに候補はいくつかあるんだが、どれも決め手に欠けてなー」
「お値段とか?」
「それもあるけど、安くてもワープロとか使い物にならないのがあるのが痛いんだよ。プリンタを買えるまでは、編集部と同じシリーズのマシンにしないといけないし」
「安いのを買っても、お仕事にならないのね?」
「お、わかってきたじゃないかかなたも」
 真剣に眺め続けるそうじろうさんと、それを後ろで見守るかなたさん。
 まだ若いはずなのに、まるで長年連れ添っているみたいにぴったりな二人。
 もしもかなたさんが生きていたら……そんな考えは、さっきのこなたとのやりとりがあってもやっぱり消えない。
「うーむ……お?」
「どうしたの?」
「いや、これってなんかよさそうだなぁと」
 そうじろうさんは、棚に展示されてた一台のマシンに手をぽんと置いた。
「それ、ディスクが今までのとはちょっと違わない?」
「ああ、5インチじゃなくて3.5インチだな。今流行ってるのとは違って少し小さいんだ」
「ふうん」
「それに、マシン自体も小さくて置きやすそうだし。値段、値段はっと」
「そう君、これこれ」
「うん? おお、18万かー。これだったらなかなか。編集部もこのシリーズだし、なんといっても小さいな」
「本当、小さいのが大好きなのね、そう君って」
「こらこら、小さいの"も"好きだって言ってるだろ? それに」
「それに?」
 いたずらっぽく笑うと、そうじろうさんはかなたさんの頭にぽんっと手を置いて、優しくなで始めた。
「小さいほうが、逆に存在感があることもあるってもんだ」
「……そうなの?」
「そうなの」
 うわー、なんか桃色空間作り出してますよこの人たち。
 まさか、ここまでラブラブだったとはねー。もしも一度だけ聞けるなら、どうしてそうじろうさんのことを好きになったのかって聞いてみたい気分だわ。
「んじゃ、これとディスプレイはさっきのにして、ワープロは『松』で、あとDOSも買うか。すいません、これお願いしたいんですけどー」
 そうじろうさんは店の奥のほうに声をかけて、店員さんを呼び出した。
 ……うん?
 なんか、袖がぐいぐいって引っ張られてる。
「こなた?」
「か、かがみ、ちょ、外……」
 外を見てるから表情はわからないけど、こなたは私の袖を強く引っ張って外へ出ようとしていた。
「な、なんなのよもうっ」
 仕方が無く、私は引っ張られるまま外へと出て、店から少し離れたところに連れて行かれた。
「どうしたの? 突然外に出て」
「あ、あのマシン……あのマシン……」
「あのマシンって、そうじろうさんが買ってたマシンがどうしたの?」
「あのマシン……U君! PC-286U! お父さんが今も大事にしてるマシンだよっ!」
「今も大事にしてるって、さっきのマシンを?!」
「そうだよ! 立ち上げなくなっても掃除は欠かさないし、捨てないからどうしてかなって思ったけど、そうだよ! お母さんと一緒に買いに来てたんだよ!」
「かなたさんとって、あんたのお父さんは教えてくれなかったの?」
「『想い出が詰まったマシンだからなー』って言ってたけど、詳しいことまでは教えてくれなかった。でも、やっと謎が解けたよ! そうだよ! お母さんとの想い出だったんだよ!」
 見た目相応に、こなたが子供のようにはしゃぎだす。
「夢だから、これはホントは違うかもしれない。でも、お父さんがずっと大事に掃除してとっておくのはそうとしか考えられないって! 絶対、絶対!」
 いつもの飄々とした態度じゃない、感情をいっぱいに出すこなたなんて初めて見たけど、それはとっても新鮮で……

「よかったね、こなた!」
「うん、よかったよー!」

 素直にそう言えるほど、とっても可愛らしかった。
 
* * *

 
 少しずつ、低くなっていく太陽。
 時間が経つのは、ゆっくりなようでとっても早い。
 夢の中のはずなのに、それはここでも変わらないみたいで……

「お疲れ、こなた」
「やー、満喫、満喫ですよー」
 私たちは、JRの昭和通り口横にある秋葉原公園に来ていた。
 ここも私たちの時代とは違って、ちょっと狭め。それでも子供たちははしゃいで遊んでるし、すぐそこのビルの前では、どこの国のかもわからないゲームを並べたおじさんが堂々と売り子をしていた。
「夢の中とはいえ、お父さんとお母さんのデートを見守れたし、懐かしい街並みも見れたし」
「ほんと、充分楽しんだみたいね」
「あー、でも」
 こなたは苦笑すると、ぽりぽりと泣きぼくろのあたりをかきだした。
「ごめんねー、私だけ楽しんだ形になっちゃって」
「なーに言ってるの。あんたに巻き込まれるのは今に始まったわけじゃないでしょ」
「そりゃそうだけどさ」
「それに、夢にまで巻き込まれるなんて、貴重な経験させてもらったわよ。あんた、もしかしたらかなたさんに会いたいーとか強く願ったりしなかった?」
「あう、そいつは痛いとこをついてきますなー……」
 おや、図星?
「いやー、ほら、お父さんってばこの時期百面相するって言ったでしょ? 毎年毎年毎年毎年するからいーかげんウザくなって『お母さんが「めっ」てすれば多分万事解決なはずなのにー』とか、そーゆーことを考えてしまったわけですよ」
「かなたさんが、あんたのお父さんを叱れば万事解決って?」
「そーそー」
「……その妄想が、この夢を見せたかもしれないってわけ」
「あー、そういうことになるかもしれませんなー」
 ネコ口でとぼけて見せるこなただけど……

「ホント、あんたの将来末恐ろしいわ。いろんな分野に渡って」
「いやーそれほどでも」
「だから褒めてないっ」

 こんな会話をしてたら、いいかげん疲れるわ……
 これで目が覚めて気分爽快に、なーんて絶対無理ね、これは。
「はぁ……」
 ため息をつきながら、私は公園の向かい側を眺めてみた。
 向かい側には、ベンチに座って楽しそうにおしゃべりをしているかなたさんとそうじろうさんの姿。
 パソコンとかは重いからか全部送ったみたいで、荷物は最初に追いかけ始めた時とほとんど変わっていなかった。
 木漏れ日がきらきらと降り注ぐ中、幸せそうに笑い合ってる二人。

 ――ずっと、こんな時間が続いていけばよかったのに。

 そう思ってどうあがこうとしても、目が覚めたら歴史が変わってるなんてことはない。
 通り過ぎていった時間、既に決められてしまった真実なんだから。

「目が覚めてさー」
「え?」
「家に帰ったら、お父さん孝行しないといけないなーって思うよ。あの二人見てると」
「こなた……」
「私が、あそこにいるお母さんの分もお父さんのことを支えてかないとね」
 のほほんとした顔だけど、感慨深そうにこなたが呟く。

「あーでも、さすがに背徳行為だけは勘弁デスヨ? 私ゃそのケはないし」
「だからあんたってばどうして真面目な雰囲気の時にそうぶち壊しなセリフ吐くかねっ!」
「おやおや、かがみさんは背徳感に興味がおありですかな?」
「ちーがーうーっ!!」

 結論。こいつといる時にシリアスな雰囲気にしちゃダメ。絶対壊しにくるから。
 ……ま、ちょっとだけ例外があるかもしれないけど。ほんのちょっとだけ、ね。

「あ、お父さんがどこかに行くみたい」
「『ちょっと待ってろ』って感じだったし、ジュースか何か買いにでも行ったんじゃない?」
「なるほどー」
 ほのぼのとした二人を眺めながら過ぎていく時間。
 私たちの目が覚めたらそれでおしまいだけど、最後まで二人のことを見てから覚めて欲しい。
「ん?」
「あれ?」
 そうじろうさんを見送ると、かなたさんはゆっくり立ち上がって、
「え」
「あ、あの」
 しずしずと、にっこりと微笑みをたたえながら、
「ちょ、おま」
「う、うそ」
 こっちに歩いてきて、

「こんにちは」

 帽子を取ると、私たちに挨拶してきた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは……」
 呆然としていた私たちだけど、なんとか再起動してかなたさんに挨拶を返す。
 こなたは、さすがに帽子は取ろうとはしないみたい。
「いいお天気ですねー」
「そ、そうですね」
 他愛のない話題でも、いきなり振られるとしどろもどろになっちゃうわけで……
 よく見てみると、かなたさんはこなたと瓜二つに見えてちょっと違う。
 最初に見たときのようにアホ毛は無いし、白いワンピースのせいか、のほほんとしたこなたと違ってお淑やかな感じ。目はちょっとタレ目で、そして何より、頬に泣きぼくろがない。
 でも……なんで私たちのところに来たんだろう。

「あなたたち、朝からずーっと私たちをつけてたでしょう」
 って、ば、バレてるーっ!!
 にっこり笑ってるから怖い。なおさら怖い!
「ご、ごめんなさい、そのっ、あの」
 どうしよう、まさか「こなたのお母さんそっくりだったから」なんて言えるわけないし……
って、そうだ!
「あ、あの、お二人ともすっごく素敵そうなカップルだって思ったんです!」
 苦しいけど、こっちのほうがずっとマシ! なはず……
「…………」
「…………」
「…………」
 お願い、怪しまないで……
「ふふふっ、お似合いだなんてそんなー」
 頬をぽっと赤らめると、かなたさんはぱたぱたと手を振ってみせた。
「それで、理想のカップルってどんな感じかなってこの子と追っかけてたんです。そうだよね?」
「ふぇ? う、うんっ」
 こなたに強引に作った笑顔を向けて、返事を強要する。
 よし、これでこなたもなんとかなりそうだ。
「それなら最初からそう言ってくれればいいのに。そう君……あ、アイスを買いに行ってくれた彼は気付いてなかったみたいだけど、私はちゃんと気付いていたんですよ?」
「あ、そうだったんですか。本当にごめんなさい」
 よかった、変な行動をしないで……って、尾行も充分変なことか。
「それで、ちょっと聞きたいんですけど……今日はパソコンを買いに来てたんですか?」
「ええ。そう君は小説を書いてるから、ちょっとでも効率を良くしようって買いに来てたの」
「へえ」
 しばらくにこにことしていたかなたさんだったけど、しばらくすると思い出し笑いをしたみたいにぷっと吹き出した。
「あの、どうかしたんですか?」
「ううん、そう君のパソコンを買う本当の理由がおかしくってね」
「本当の理由、ですか?」
「そう。『ずっとペンを持ってたら腕をおかしくする。そしたらかなたの手伝いが出来ないし、生まれてきた赤ん坊に高い高いが出来ない!』って力説して、絶対にパソコンを買うんだーって小説をいっぱい書いて、採用されるまでがんばってたの」
「た、高い高いって」
「子供がいつ生まれるのか、いつできるのかもわからないのによ? ……でもね」
 くすくすと笑っていたかなたさんの表情が、また優しい微笑みに変わっていく。
「ああ、この人なら生まれてきた子供を精いっぱい愛してくれるって、そう思ったの。美少女ゲームが大好きで、漫画が大好きで、アニメも大好きだけど、それ以上に産まれてくる子供のことを想ってくれて……私のことも、想っていてくれて」
 そう言って、さっきそうじろうさんが歩いていった道を振り返る。

「だから、そう君が一緒にいてくれて本当によかった」

 振り返った今、かなたさんがいったいどんな表情をしてるかわからない。
 だけど、強く実感がこめられた言葉。
「幸せ――」
「うん?」
 ふと、黙っていたこなたが口を開いた。
「幸せ、なんですね。
 想える人と一緒にいて、想ってくれる人が一緒にいてくれて」
 それは、疑問じゃなくて確認。
 きっと、こなたが産まれたときから聞きたかったはずの言葉。
「ええ」
 そうはっきり言うと、かなたさんはゆっくりと振り向いて――
「これからも、きっと幸せ」
 白い花が咲くように、にっこりと笑ってくれた。
「そうですか」
 こなたも、それに応えるようににっこりと笑う。
 帽子の影から見えるその笑顔は、かなたさんそっくりの笑顔だった。

「あれ? かなた、その子達どうしたの?」
 二人の幸せオーラにあてられていると、そうじろうさんが公園に戻ってきていた。
「うん、たった今友達になったの」
「たった今? へー、珍しい」
 そうじろうさんは一瞬じろっと私たちを見ると、目を閉じて自分の顎に手を添えた。
 無精髭がないし、若々しく見える……って、当たり前か。
「うーん、二股ポニテの子は巫女服。ちっこい子はスポーティーな格好が似合ってそうだな」
「うげ」
 こ、この人は何を言い当ててますか?!
「おいたはしちゃだめですよ、そう君」
「じょ、冗談だってば、かなたー」
 かなたさんが頬を膨らませると、そうじろうさんは焦りながら謝り倒していた。
 ほ、本当にこの人ってば……
「そだそだ、ちょっとストップ」
「ん?」
 こなたは二人を手で制すると、カバンの中からゴソゴソと何かを取り出した。
「お近づきの印ってことで、お二人の写真を一枚いいですかねー」
「写真?」
 こなたが取り出したのは、この時代には無いはずのデジカメ……って、ちょっと待った!
「こ、こなた!」
「はい?」
 私はこなたの肩を抱くと、強引に二人に背を向けて小声で説教を始めた。
「ここでデジカメって、何考えてるのよ!」
「いーじゃん、どうせ夢だし。それにさ」
「それに?」
「最後ぐらいさ、二人の姿を目に焼き付けておきたいんだ」
 お気楽に言ってるけど……それはきっと、こなたの切実な願い。
「……そうね。夢の中じゃ、なんでもありだもの」
「さんきゅ、かがみ」
 だから……
「いい写真、撮りなさいよ」
 これが、私のこなたへの願い。





 
 んー、もうちょっと木漏れ日があるところに移動かな。

 そうそう、そこらへんそこらへん。

 あ、おねーさんは帽子をそっと右手で抱きかかえて。そう、そんな感じ。

 ほら、おにーさんはデレデレしない。男のデレデレは需要低いよー。

 そうそう、凛々しく笑うのが今の腐女子にははやって――え? 腐女子? 気にしない気にしない。

 二人とも、もうちょっと寄り添って……あー、肩が触れないぐらい。それ、いーねー。

 じゃあ、仕上げに二人で手を握って。もー、照れないの照れない。夫婦なんでしょ?

 そう……そう、しっかり握って。簡単にほどけないようにしといて。

 離さないでね、絶対に……いつまでも、その手を離しちゃだめだからね。

 ん、オッケー! それじゃあいくよっ!
 
 
 
 
 
はいっ、ちーずっ!

 
 
 
 

* * *


 葉っぱが風にゆられて、そっとざわめく。
 目を開くと、そこにあるのはたくさんの木々といつもの駅。
 見慣れていたはずの秋葉原公園だけど……ここに、人は誰もいない。
 さっきまで聞こえた売り子の声もしないし、遊具と一緒に、子供のざわめきも。

 そして……かなたさんとそうじろうさんも。

 立ち上がって写真を撮っていたはずの私たちは、一緒にベンチに座って眠りこけていた。
「ん……」
 しばらくして、こなたも目を覚ます。
 私と同じようにきょろきょろと辺りを見回すと、慌てたようにカバンの中からデジカメを取り出した。

 ピッ、ピッ、ピッ

 一枚ずつ、順送りされていく画像。
「あっ」
 確かに、公園の写真があった。
 でも、それは……
「私と……こなた?」
 この時代のここで撮ったらしい、私たちの写真。
 こなたがあの二人に言ったように、ぎゅっと手を繋いだ写真……
  
 
「……かがみ」
「え?」
「ありがとね」
「こなた……」
「一緒に、お母さんに会ってくれて」
「……うん」
「私……お母さんに会えたんだよね?」
「……うん」
「二人のあしあと、一緒にたどってくれたよね?」
「……うんっ」
「夢だけど……夢じゃなかったよね?」
「夢じゃないよ……」
「一緒におしゃべりして、お父さんのこと聞いて……」
「幸せそうだったよね……」
「それで、最後に写真も撮って……」
「……うん」
「……お母さん」
「……こなた」
「……おかーさん、おかーさん……おかーさんっ……」


 声を潤ませながら、こなたが私にぎゅっと抱きついてくる。
 私はただ、そんなこなたのことを抱き締めてあげることしか出来なかった。
 
  
| | novel
Copyright (c) 2008 Kazuki Takatori All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-