そばにいるよ

novel
 こんこんっ

「はーい」
「えっと……つかさ、今いいかな?」
 ドアのノックにふり返ると、ドアのすきまからお姉ちゃんが顔を出した。
「うん、ちょっと本読んでただけだから」
「勉強?」
「えーと、ちょっと似てるかも」
「ふうん……あ、なんだ。それ読んでたのね」
 お姉ちゃんは中に入ると、私が手にしていた本を見て納得したみたいにうなずいた。
「うん。そろそろ新しいのを作ってみようと思って」
 私が読んでいたのは「夏場に美味しい料理100」っていう本。だんだん暑くなってきたし、もっとレパートリーも増やさないとって思って読んでたんだ。
「冷製トマトパスタにタンドリーチキン、バジルのサラダにミネストローネ……ミネストローネって、冬場のスープじゃないの?」
「トマトは夏場が旬だから、この時期のトマトで作るのが一番おいしいんだって」
「ふうん、料理ってそういう旬が大事なんだ」
 そう言いながら、お姉ちゃんはパラパラと本をめくった。
「あ、これいいな」
 時々手を止めると、そうつぶやいてページをながめたりするお姉ちゃん。後でメモして、今度作ってあげようっと。
「それでお姉ちゃん、何か用事なの?」
 そのまま読んでいそうだったけど、何か用事だと思った私はお姉ちゃんに声をかけた。
「あっ、別に今じゃなくてもいいんだけど」
「?」
 顔を上げると、お姉ちゃんは何か苦笑いしながら目を泳がせていた。
 もしかしたら、言いづらいことなのかな?
「どうしたの?」
「あの、いや、ほら……明日、こなたの家に泊まりに行くわよね」
「うん。今度はゆきちゃんも来るんだよね」
 前の時は用事で来れないって言ってたけど、夏休みが始まって時間が取れるようになったから泊まろうって話になったんだっけ。
「それでさ、みゆきも何か持ってくるって言ってたでしょ? つかさも何か作るって言ってたし」
「うんっ。何にしようかなーって迷ってるよー」
「で、こなたもシチューじゃないにしろ、何か作るだろうし……」
 ……えーと、もしかして、これって?
 そう思い当たったとき、お姉ちゃんは思いっきり両手をあわせて私に頭を下げた。
 
「お願いっ! 私にも作れるお菓子を教えてっ!」





そばにいるよ

from "らき☆すた - Lucky☆Star -"

Written by Kazuki Takatori





「そっ、そんな大声で言わなくてもー」
 私があわててお姉ちゃんの手を止めると、
「だって、いのり姉やまつり姉に頼んでも『私は忙しいしー』って逃げるし、お母さんは日頃のお料理で手一杯だし」
 ため息をつきながら、お姉ちゃんは私のベッドに腰かけた。
「だから、私に?」
「つかさは家で料理が一番上手いし、丁寧だから……ねえ、お願いっ!」
「ああっ、その手はやめてよー!」
 ううっ、されてるこっちのほうが恥ずかしくなっちゃう。
 前も料理のことでここまで必死なお姉ちゃん、あんまり見たことないよ。
「そんなことしなくても、ちゃんと教えてあげるってばー」
「ホントっ?!」
 いたたまれなくなってそう言うと、お姉ちゃんは目をきらきら輝かせながら私の手を取ってきた。
「うんっ。でも、どうして突然?」
「な、なんか私だけ作らないっていうのも居心地悪いっていうか……たまには、こなたに泊めてもらってるお礼でもしたいなーとか思ったのよ」
 ちょっと顔を赤くしながら、ぽつりと言うお姉ちゃん。
 いつもこなちゃんやみさちゃんといるときは強気だけど、私にはこういうことをちゃんと素直に話してくれる。
「それだったら、最初に言ってくれればよかったのに」
「つかさに頼ったら、なんだか頼りっぱなしになりそうでさ……」
「もう、そんなことないってばー」
 うん……そんなことないよ。
「大丈夫、お姉ちゃんも作れるおいしい料理を探しておくからねっ」
「ありがと、お願いっ!」
 お姉ちゃんはまた手をあわせると、申し訳なさそうにそう言った。

 私のほうが、いつも頼りっぱなしなんだけどなぁ。
 生まれたときから、ずっと……

*  *  *  *  *


「ミルクレープかぁ」
 次の日の朝、私とお姉ちゃんはおそろいのエプロンをつけて台所に立っていた。
 高校に入ってからお姉ちゃんと選んだエプロンだけど、こうやって一緒につけるのは久しぶりで、なんだかうれしくなる。
「ごめんね、いつもはつかさがお菓子を作ってるのに」
「ううん。こなちゃんが台所を貸してくれるっていうから、私は夕ごはんのおかずになりそうなものを作らせてもらうことにしたんだ」
 私はそう言いながら、室温に戻しておいた材料をガス台の上に置いた。
 最初はクッキーとかドーナツって思ったんだけど、お姉ちゃんはもうちょっと手の込んだものを作ってみたいって言ってたから、ケーキよりも簡単めなクレープの料理を選んだんだ。
「でも、ミルクレープって何枚もクレープを作るから結構手間じゃない?」
「そうでもないよー。焼くのに慣れるまではちょっと大変だけど、コツをつかんだら簡単だから」
「コツねー……ホントに私にできるかなぁ」
「お姉ちゃんだったらすぐ慣れるよー」
 不安そうなお姉ちゃんの手をぎゅっと握って、私は元気づけようと笑いかけてみた。
「まあ、とりあえずはやってみましょうか。よろしくお願いします、つかさ」
「はいっ」
 うん、その笑顔その笑顔。これで、少しでも元気が出てくれるといいな。
「まずはクリームから行こっか。牛乳500ccに砂糖80グラム、バニラビーンズとシナモンスティックを1本ずつに、重曹をほんの一つまみだね」
「500ccと80グラムね、わかったわ」
 お姉ちゃんはうなずくと、てきぱきと牛乳をはかり始めた。こういうところは、お姉ちゃんもちゃんとできるんだけど……
「つかさ、これって何クリームなの?」
「バニラクリームにしようって思ってるけど、それでいい?」
「うーん、だったらもうちょっと砂糖を控えても……」
 ほらー、また始まっちゃった。
「ちゃんとそのあたりは計算してあるから、気にしなくても大丈夫だってばー」
「むぅ、そっか」
 お姉ちゃんはカロリーとかを気にして、よくレシピにある分量を加減しすぎたりする。これさえなかったら、もっとお料理も上手にできるはずなのに。
「これを全部鍋に入れて、と……で、次は?」
「次はね、混ぜながら沸騰させるの。そうしたら、今度は弱火にして煮詰めるんだよ」
「混ぜながらかー、ちょっと面倒ね」
「そうしないと、なめらかなクリームにならないから」
「はーい」
 それともう一つ、ちょっと大ざっぱなところもいけないのかな。うう、結構ハードルは多いかも……
 それでも、お姉ちゃんは鍋をぎゅっとにぎって、泡立て器でしっかりまぜ始めた。
 私はそんなお姉ちゃんのことを見守りながら、昔のことを思い出していた。

 
 ……お姉ちゃんは、私をいっぱい助けてくれたよね。
 小さなときから、その手のひらで。
 
 
『ふぇぇぇぇぇぇぇぇ……』
『やーいっ、つかさのとろりんぼー!』
 小さい頃からとろかった私は、よく小学校でいじめっ子にいじめられていた。
 いじめっ子っていってもからかうぐらいだったけど、私には何もできなくて……
『ちょっと! なにつかさをいじめてるのよっ!』
 そんな時、お姉ちゃんは私の前に立っていじめっ子から守ってくれていた。
『うわっ、おこりんぼかがみだ! にげろー!』
『こらっ、まてーっ!!』
 そうやってお姉ちゃんが助けてくれるうちに、いじめっ子たちはだんだん私のことをいじめなくなっていった。

 そして、今もずっと守りつづけてくれている。


 クリームがぐつぐつと煮立ってきて……うん、このくらいかな。
「お姉ちゃん、そろそろ弱火にしてもいいよ」
「このくらいで弱火……っと」
 お姉ちゃんはコンロの火を弱めると、すんすんと匂いをかいだ。
「だんだん甘い匂いがしてきたわね」
「バニラのいい香りがするでしょ。これで、あとはコトコト50分ぐらい煮詰めるの」
「えっ、50分も?!」
「心配しなくても大丈夫だよ。その間に生地を作るんだから」
「あ、なるほど」
「こういうことは、手際よくやらないと」
「普段の勉強も、このくらい手際いいともっとできると思うんだけどなあ」
「ううっ、お姉ちゃんのいじわるー……」
 そう言うと、私たちは顔を見合わせて笑い出した。
 少しいじわるだけど、こういうところもお姉ちゃんらしいところかな。

 
 
『このxには、答えの96をここにある8で割った数を代入するの』
『えっと、それじゃあここは……12?』
『そう、その公式を覚えておけばここは大丈夫よ』
 成績が悪かったときも、お姉ちゃんは一緒に勉強に付き合ってくれた。
 教科書をなぞって、わかりやすく答えを導いてくれる魔法の手。
『時間が無くなっても、あんまり慌てないこと。公式が頭からポンッと抜けないよう、今のうちから慣らしていったほうがいいわね』
『うんっ』

 少し先に行っちゃっても、お姉ちゃんは立ち止まって待ってくれた。
 さしのべてくれた手は、少しずつ、少しずつ大きくなっていたよね。

 
 
 材料の小麦粉をボウルにふるい終わったお姉ちゃんは、また泡立て器を手にした。
「あっ、強くまぜちゃだめだよ。これもだまができちゃうから、ゆっくり、ゆっくりなじませるの」
「ゆっくりね、わかったわ」
 そう言ってまぜ始めたけど……ああっ、ちょっと早いよー。
「えっと、もう少しゆっくりかな。ちょっとごめん」
「えっ?」
 私はあわてて、自分の手をお姉ちゃんの手の上にあわせた。
「こう、円を描くみたいにゆっくり、ゆっくり……そう、こんな感じ」
「ありがと、つかさ」
 私がお姉ちゃんの手をはなすと、今度はちゃんとゆっくりまぜはじめてくれた。
 さすがお姉ちゃん、その調子っ!
「それにても、こんなに手間がかかるなんて……お菓子作りってホントに大変なのね」
「その分、食べてもらったときに喜んでもらえると、とってもうれしいんだよ」
「だから、つかさは私たちが食べてるときにニコニコ笑ってるんだ」
「うんっ」
「じゃあ、私もその笑顔目指して頑張ろっと」
「が、がんばるのはいいけど、まぜるのもがんばらなくていいんだよー?!」
 私はあわてて、はりきって生地をまぜはじめたお姉ちゃんの手を止めた。
 もう、お姉ちゃんってばー。

 
 
『もうっ、心配したんだからねっ!』
 遠くまで遊びに行って迷っちゃったときも、お姉ちゃんはずっと私を探してくれた。
『えうっ……ごめんなさい……』
 隣の駅前のベンチで泣いていた私の手をとって……ぎゅっと、抱きしめてくれて。
『ほらっ、お家に帰ろ? お母さんたちも心配してるよ?』
『うんっ!』
 そのぬくもりは、私のさみしさを全部溶かしてくれた。
 

 
「つかさ、このくらいでいいのかな?」
 お姉ちゃんの質問を聞いて、私は泡立て器で生地をゆっくりかきまぜてみた。
「うん。だまもないし、このくらいでちょうどいいと思うよ」
「よかったぁ」
 そう言って、お姉ちゃんはほっと胸をなでおろした。
「出来た生地は、冷蔵庫で1時間ぐらい寝かせておくの。クリームも冷蔵庫に入れたし、一休みしよっか」
「そうねー……はー、つかれた」
「おつかれさま、お姉ちゃん」
 私は冷蔵庫からレモンティーを取り出すと、お姉ちゃんといっしょに居間へ入った。
「それにしても、見るのとやるのじゃ大違いね。テレビとか見てると簡単そうだけど、こう作ると時間もかかるし、手間もけっこうかかるし」
「テレビだと『ここに30分煮込んだものが』とか出てきちゃうからねー」
 テーブルに向かい合って座りながら、二人で苦笑いする。
「でも、つかさはいつもこうやって手間をかけて作ってるんだ……なんか、感心しちゃうわ」
「そ、そんなことないよ。私はこのくらいしかできないし……」
「『このくらい』って謙遜するんじゃないの。料理音痴の私にもここまで教えられたんだし、十分凄いわよ」
 私がいれたレモンティーを口にして、お姉ちゃんが優しく言ってくれた。
「間違ってくれるときもわかるように教えてくれたし、一緒に手をとってやってくれて、慌てないで済んだし。ホント、つかさの手って魔法みたい」
「ま、魔法って、そんなー」
 お姉ちゃんの手こそ、魔法の手なのに……
「だって、お菓子も料理もパパッと作っちゃうんだから。さすが、将来はシェフ志望ってところね」
「あ、あはは」
 あんまりこうやってほめられたことないから、なんだかくすぐったいや。
「つかさは卒業したら、調理師の専門学校に入るつもりなんでしょ?」
「うん」
「つかさだったら、きっといいシェフになれるわよ」
「ううっ、失敗しすぎないようがんばらないと」
「あんまりおどおどしないの。つかさなら大丈夫だって」
 学校生活が3分の2を過ぎて……もう"卒業"って言葉が出てくる時期。
「それにしても……そっか、卒業したら、初めて学校が別れ別れになっちゃうんだ」
「そうだねー……」
 18年間一緒だった私たちが、初めて別の道を進むことになる。
「近くにつかさがいなくて、ちょっと違和感を感じたりして」
「私も、お姉ちゃんがいなくて不安になっちゃったりして……」
「そんな不安になるなんて言わないでよ。家に帰れば、私は一緒にいるんだから」
「うん」
 でも……本当に慣れるのかな。
 ずっと、いつでも一緒だったから。
「もう、そんな不安そうな顔をしないのっ」
 そう言うと、お姉ちゃんは私の手をとって、
「あっ」
 上から、きゅっとにぎってくれた。
「つかさの腕なら、いろんな人に美味しいって言ってもらえるシェフになれると思うから。
ちゃんと自信を持って、自分が信じる道を進んでいくこと。いい?」
 その手から、優しいぬくもりを感じた私は……
「うんっ!」
 笑顔で、大きく頷いた。
 
 ――私が、この道を選んだのはね。

『あっ、これおいしい』
『えっと……ホント?』
『ホント。ふわふわの卵焼きで、とってもおいしい!』

 小さいころ、一生懸命練習した卵焼きを食べてくれて……
 嬉しそうに、笑ってくれて。

『つかさは、きっといいコックさんになれるわよ』

 そう言って、私の手をにぎってくれたからなんだよ。

 お姉ちゃんみたいな、力強い手じゃないけど。
 この手で、いろんな人の笑顔を……
 そして、お姉ちゃんの笑顔をもっと見てみたかったから。
 
「あちっ!」
「ああっ、そっとやっちゃだめだよー。こうやって……えいっ」
「そ、そんなに素早くやるの?」
「そっとやっちゃうと、フライパンだけじゃなくて生地の熱さも伝わっちゃうから」
「へえ。じゃあ、もう一回……えいっ!」
「そうそう、その感じ。いい焼き色だねー」

 もしも離ればなれになることがあっても、私はきっと忘れない。

「クリームは真ん中に丘みたいになるように……って、こう?」
「うん、外側は低くて、真ん中が少し高くなるようにするの」
「だから、ドトールのミルクレープとかは山型になってたんだ」
「思いついた人って凄いよねー。それじゃあお姉ちゃん、あと15段、がんばって!」
「……うー、やるっきゃないわね」

 お姉ちゃんがにぎってくれた、手のぬくもりを。

「最後は粉砂糖を、薄化粧みたいにふりかけてと」
「あんまりかけすぎると、生地のおいしさが台無しになっちゃうんだ」
「確かに、この香ばしい匂いが甘ったるくなると思うと……慎重に、慎重に」
「うん、きれいきれい」
「こうやると、なんかパティシエになった気分ね」
「お姉ちゃんも、私といっしょに調理師の学校に行く?」
「そ、それはさすがに遠慮しとくわ」

 それは、世界でいちばん大事な……

「つかさ、箱はこれでいい?」
「うん、その大きさなら入ると思うよ」
「じゃあ、ラップをかけて、箱の中に入れて……と」
「はいっ、完成ー!」
「あー、できたー!」

 私の、何よりもがんばれるお守りだから。

*   *   *

 
「……おおっ、おいしい!」
「本当、おいしいですね」
 こなちゃんとゆきちゃんが、切り分けたミルクレープを口にして声を上げた。
「いやー、まさか手作りのミルクレープが食べられるなんて。つかさはホントに凄い子だねー」
「普段はお店でしかお目にかかれませんよね。本当、凄いです」
「あの、その、実はね」
 ちゃんと、二人に伝えないと。
「そのミルクレープ、お姉ちゃんが作ったんだよ」
「まあ」
「……へ?」
 ゆきちゃんは驚いて、こなちゃんは……あ、固まってる。
「つ、つかざが教えてくれたんだけどね」
「……You?」
 そ、そんなカタコトの英語で言わなくても……
「そ、そうよ。私が作ってみたの。悪い?」
「……Really??」
「う、うん。お姉ちゃん、がんばって作ったんだよ」
 私が頷くと、こなちゃんはもう一口ミルクレープを食べた。
「……美味しい。おかしい。ウマイ。おかしい。そんな、かがみがこんなに美味しく作るなんてっ!」
 そう叫ぶと、こなちゃんは一気にミルクレープを食べ終わった。
「かがみ」
「え、な、なに?」
「ごちそーさま。また、夕ごはんの後にもらうからね」
「こ、こちらこそ……お粗末様でした」
 そう言って顔を上げたお姉ちゃんの顔は、すっかり安心しきっていた。
 よかったね、お姉ちゃん。
「あー、なんかちょっとすっごく悔しいから、私も今日は思いっきり腕を振るわせてもらうとしますかー!」
「あはは、こなちゃん言ってることがめちゃくちゃだよー」
「かがみがこんなの作るなんて絶対何かの前触れだって! だから、私が美味しいのを作って阻止してやる!」
「ちょっと、人がゴジラか何かみたいに言わないでよっ!」
「あ、あらあら」
 こなちゃんは暴走して、お姉ちゃんは怒って、ゆきちゃんはおろおろしちゃって
「もう、二人ともやめってばー!」
 でも……三人も楽しそうだから、いいのかな。

「はー、こなたってばいきなり変なスイッチ入っちゃうんだから」
「あははっ」
 おやつを食べたあと、私たちは台所を借りて一緒にお片づけをしていた。
「でも、こなちゃんもゆきちゃんも喜んでくれたからよかったね」
「正直、ちょっと不安だったけど……ほんと、つかさのおかげね」
 二人の笑顔を見たお姉ちゃんは、とっても嬉しそうだった。
 こなちゃんとはじゃれあってたけど、それもほんとに楽しそうだったし。
「お姉ちゃんが、いっぱいがんばったからだよ」
 私はそう言いながら、お姉ちゃんの手を取った。
 そこは少し火傷になってて、ほんのり赤くなってるところもある。
「えっと……大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。名誉の負傷って思えば平気よ。それよりも、さ」
「うん?」
 私が首をかしげると、お姉ちゃんはほんのりほっぺたを赤くしながら、
「また、何か作りたくなったら……お願いしてもいいかな」
 たまに私に見せてくれる、照れ笑いを浮かべてみせた。
 その笑顔が嬉しくて、私も……
「もちろんっ!」
 お姉ちゃんの手をそっと包み込んで、大きくうなずいた。
 
 
 ずっと、一緒につないでくれた手。
 私が困ったときや、迷ったときにつないでくれた、あったかい手。

 だから……
 私も、お姉ちゃんの手をしっかりにぎってあげなくちゃ。
 
 
novel
Copyright (c) 2008 Kazuki Takatori All rights reserved.
 

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