novel

● 好きスキだいすき  ●



好きスキだいすき

from "らき☆すた - Lucky☆Star -"

Written by Kazuki Takatori



「あれっ、みゆきさんがお薬だなんて珍しいね」
 お弁当を食べ終わってほうっとしてると、みゆきさんがカバンからミネラルウォーターのヘットボトルと錠剤を取り出していた。
「何よみゆき、どこか調子でも悪いの?」
「ゆ、ゆきちゃん、保健室に行こうか?」
「ち、違いますって。これはただの痛み止めですよ」
 私たちの言葉に、みゆきさんは苦笑いしながらぱたぱたと手を振った。
「痛み止め?」
「はい。虫歯の治療痕がたまにうずくので、昨日お医者様から処方していただいて」
「治療痕がうずくって、こう、キンキンッと?」
「え、ええ……」
 思い出すのもイヤなのか、みゆきさんは私が言った擬音にぴくんと反応してみせた。うーむ、これはあんまりいじらないほうがいいかもしれない。
「でもさ、最近のお医者さんって結構至れり尽くせりらしいね」
 てなわけで、関連した話でちょこっと方向転換。
「えっ、そうなの?」
「うん。こないだゆーちゃんが話してたんだけど、病院によっては診察中のちょっとした空き時間に備え付けのテレビを見させてもらえたり、看護婦さんのほうから図解入りでいろいろ説明してもらえたりとかすることもあるんだってさ」
「それってずいぶん高そうよねー。保険外の請求とかもあったりして」
「ところが普通の請求なんだって。最近はフツーに診察しただけじゃお客さんも満足いかないとかで、プラスアルファのサービスが求められてるらしいよ」
「確かに、最近は内装なども患者さんが落ち着くように作られた病院が多いですね」
 薬を飲み終わったみゆきさんも話に参加してきて、軽くうなずく。
「私たちが小さい頃は、ちょっと古い市民病院で殺風景な待合室ってのが多かったけど、近頃はそれじゃあ敬遠する人が多いのかもしれないわね」
「最近は病院に行ったことないけど、今度行ってみるときは色々調べてみようかな」
「あのねつかさ、病院に行くときってそんなに余裕は無いことが多いと思うんだけど?」
「あ、あはははは」
「まあ、あんまり病院にはお世話になりたくないもんだね。健康が一番一番」
「そうそう」
 実感を込めた私の言葉に、みんながうなずく。
「ちなみに泉さん、その病院ってどういうところかってわかります?」
「みゆきさん、そこにかかりたいの?」
「いえ、将来のちょっとした参考になればと思いまして」
「あー、なるほど。たしか、北千秋駅にある歯医者さんって言ってたよー……んなっ?!」
 って、み、みゆきさーん? どうして教室のドアの影からこっちを見て……とゆーか、いつの間にそこに隠れたんデスカ?!
「は、歯医者は……歯医者だけはー……」
「や、だ、だから、設備の話だけだったんだから関係は――」
「だめですっ、は、歯医者だけはダメなんですーっ!!」
「み、みゆきさーんっ?!」
「みゆきっ?!」
「ゆきちゃんっ、ゆきちゃんっ?!」
 いつものおしとやかさがウソみたいに、みゆきさんは泣き叫びながら廊下を走っていってしまった。
「……あのさ、こなた」
「……今度から歯医者の話題はNGワードにしとくよ」
「そのほうがいいねー……」
 突然のことに呆然としながら、私たちは深くうなずき合った。

 ……けれど。
 みゆきさんの別の歯が虫歯になってまた話題になるのに、そう時間はかからなかったわけで。

「みゆきさーん、よかったらいっしょに歯医者さんに行ってあげよっか?」
「い、いいですっ! 一人で行けますからっ!」

 私の言葉に、ほっぺたを押さえながら涙目になるみゆきさん。
 もしかしたら、悪い男にひっかからない代わりに悪い虫に好かれるってゆー体質なのかもしれないやねー……


「そんな体質、絶対おことわりですっ!」
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