ホントのお気に入り、ホントの気持ち
「すー……すー……」
「あー、こりゃ完全に寝ちゃってるわね」
頬をつついてみたりぐにゅっとつまんでみても、つかさが起きる気配はない。
10時半時を過ぎてからうつらうつらしてたけど、まさかこのまま寝入っちゃうとは。
「しょうがないよ、このまま寝かしてあげよ」
「ごめんね、こなたのベッドなのに」
「いーのいーの、こういうときはゆっくり寝かせてあげないと」
そう言いながら、こなたは毛布と布団をつかさにかけてくれた。
「ふーん、なかなか手慣れてるじゃない」
「よくゆーちゃんを看てたりするからね」
こいつってば普段はマニアックな言動が多いけど、料理のことといい、今のことといい、
妙に家庭的なところもある。本当、不思議なヤツよね。
「んじゃ、私らもそろそろ寝よっか。明日は朝一でアキバだし」
「うん、布団はこれでいいとして……あ、枕借りてもいい?」
「どーぞどーぞ、押し入れから好きなの持ってっちゃってよ」
「ありがと」
こなたの言葉を聞いて、押し入れをそっと開ける。
えーっと……あ、これこれ。この黄色い枕。
私はそれを手にして、ぎゅっと抱きしめた。
……うん、この匂い。
こなたのシャンプーの匂い……それと、こなたの匂い。
この匂いが、なぜかすごく落ち着くんだ。
「おーい、かがみん。立ったまま寝ちゃだめだよー」
「ね、寝てないわよっ」
振り返った私は、のほほんと寝転がってるこなたに慌てて言葉を投げつけた。
それでも、この枕は投げたりしない。
私の、この家での一番のお気に入りなんだから。
ホントのお気に入り、ホントの気持ち
from "らき☆すた - Lucky☆Star -"
Written by Kazuki Takatori
「おやすみー」
「うん、おやすみ」
部屋の灯りを消して、布団にごろんと寝転がる。
いつもこの家に来るとつかさと一緒だったけど、今日はこなたと一緒。そして、枕はいつもの枕。
これなら、いい夢見れそうね。
すうっ……
うつぶせになって、枕の匂いをゆっくりと吸う。
……うん、いつもの「こなたの匂い」だ。
この匂いを感じてるだけで、こなたが間近にいるって思える。
どうしようもないと思うときもあるし、キツく当たっちゃうときもあるけど、そんな時も
私を受け入れてくれて、一緒に遊んでくれて、一緒にいてくれて……そんなこなたが隣に
いるだけで、とっても落ち着く。
大切なともだちだからなのかな。これって。
あんまり認めたくないし、本人にも絶対言いたくはないけど、これだけは心の中で素直に思える。
それに、今日は枕だけじゃなく……こなた本人も隣にいる。
つかさと一緒に寝るときの落ち着きとは、また別の安心感。
「ふぁ……」
枕のぬくもりを味わっているうちに、あくびと一緒に眠気が私の頭を覆っていった。
ほんと、良い夢見られそう……
* * * * *
…………
…………
あぅ……
まくらのにおい……なくなっちゃった。
せっかく、いいきもちでねてたのに……
…………
そうだ……
「うみゅ……?」
ここに、まくらがある……
ぎゅっと、だきついちゃえ……
「ふぇっ?」
ああ、あったかい……
それに……こなたのにおいが、いっぱい。
すん、すん……
とっても、おちつくにおい……
わたしの、だいすきなにおい……
「んー、なんかくるしー……」
ずっと、このままでいたい……
このまま、こなたといっしょ……
「ううっ、いったいなに……って、えっ?」
いつか、こういうふうにだきしめて……
「ちょっ、かがみ! ムネ、ムネ!」
おかーさんのかわりじゃないけど……
さみしそうなとき、いてあげたい。
「ううっ、やーらかいけど、気持ちいいような、くやしいような、なんかフクザツ……」
ごめんね、いつもあたっちゃって……
でも、こなたもすなおじゃないんだから……
「……なんか、抱きしめられるのも悪くないかも?」
いつも、はぐらかしたりして……
だから、わたしもすなおになれないっていうのに……
「でも、ああっ、なんか目覚めちゃいそう」
ちんまりしてて、かわいっくて……
のほほんとしてて、じぶんのみちをはしりつづけて……
そのままはしっていっちゃいそうで、なんか、ふあんになる……
「……まあ、このままでもいっか」
こなたは、きづいてないんだろうな……
わたしが、こなたのことがすきだって……
「かがみ、気持ちよさそうに寝てるし」
だから、ぎゅっとだきしめて……
ぜったい、はなしたくない……
ずっと、だいすきでいたいから……
――こなたー…
――ん?
――だいすきだよー……
――……もー、そういうのは寝言じゃだめだよー
* * * * *
――がみー
……うん?
――かがみー
……こな……た?
「ほれっ、かがみ、朝だよ。朝ー」
んっ……もう、朝?
聞き慣れた声に目を開けると、こなたの顔がすぐ前にあった。
「おはよー」
「おはよう……」
「よく寝れたかい?」
「うん、ぐっすり……ってこなた、ちょっと近すぎない?」
「いや、確かに私もそうは思うんだけどー」
そう言って、こなたが苦笑いする。
「ほら、こー、ガッチリ抱きしめられちゃってたら、ね?」
「……え?」
そう言われて、私は視線を下に向けてみる。
腕……がっちりこなたをホールド。
足……がっちりこなたをホールド。
体温……こなたのぬくもりでこっちもぬくぬく。
……??!??!?!?!??!?!??!??!?
「ちょっ、ちょっとあんた、何やってるのよ!」
「何って、かがみが私を抱き枕にしたんじゃん」
「そんなことしてないわよっ! ほらっ、早く離れなさい!」
「さすがに抱きしめられたらそれもできませんよ、かがみ様ー」
「だー! かがみ様って呼ぶな!」
「なんか、こうリリィな世界に目覚めちゃいそうで」
「目覚めるなー!!」
私は叫びながらこなたのことを離そうとしたけど、横に寝てたせいか、絡めた腕も足も楽に外せない。
うー、こうなったら一回こなたを下にして……よし。
「お、おねーちゃん?!」
「つ、つかさっ?!」
首だけで後ろを向くと、つかさは枕を抱きしめながら壁に寄りかかってこっちを見ていた。
あー、ドン引きされてる……
「…………」
「…………」
「…………」
「……れ、恋愛の形は、私は自由だと思うよ?」
「だからそうじゃなくてっ!!」
ああもうっ、こなたもこなたならつかさもつかさなんだからっ!
「もっと素直になりなよ、かがみ」
「私はいつだって素直よっ!」
「そうじゃないと思うよ? 私は」
「な、なによそれ」
「……まあ、気付かないならいいや」
そう言いながら、こなたは私の下からするっと抜けだした。
……あれ、なんだろ。
「あー、寝疲れしたー」
なんか、いきなり心にぽかっと穴が開いたみたいで……
「め、迷惑かけたわね」
よくわかんないけど、そう言っておきたかった。
「んにゃ、別にー。私もかがみのおかげでぬっくぬくだったし」
「そ、そう?」
「それに、かがみのムネもやーらかかったしね」
「あ、あんた触ったの?!」
「んーにゃ?」
そう言うと、こなたは私にいつものネコ口を見せて。
「かがみがムネぎゅーしてくれたんじゃん」
ポッと、頬を赤らめた……って!
「忘れられない一夜になりそうやねー」
「そんなこと私はしないっ! させないっ! さわらせないっ!!」
「ふ、二人ともやめなよー!」
もうっ! こなたってばいっつもこうやってふざけるんだから。
でも……こんなやりとりも、楽しく思ってる自分がいる。
「まあまあ、まずは朝ごはんでも食べて。それからまた思い出話でも」
「はあ、一生思い出さなくていいわよ……」
「あ、あはははは」
なんだかんだで、私は、
「機嫌直しなよ。卵焼きに浅漬けもつけたげるから」
「……焼きのりもつけてよね」
「まっかせなさい!」
こいつのことがお気に入りらしい。
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