novel

カオスレールTOBU

 あっつー……
 雲で太陽がさえぎられてるとはいえ、こう蒸し暑いといやになってしょうがない。午後の授業が始まる前に、ジュースでも買ってちょいと涼みますかねー。
「るるるー……」
 ん? 自販機まで来たはいいけど、なんか見知った顔が黄昏れてるような。
「おーい、ひーよりんっ」
「あ……泉先輩、こんにちはっスー……」
「おおぅっ?!」
 な、なんかすっごいドス黒いオーラが漂ってるよ?! 目の下にはクマがばっちり出来てるし、ほっぺたもちょっとこけてるような……
「ど、どったの? むちゃくちゃ消耗してるみたいだけど」
「あ、あははー……太陽が、太陽が黄色いっス……」
 うわー、こりゃ相当重症だわ。


カオスレールTOBU

from "らき☆すた - Lucky☆Star -"

Written by Kazuki Takatori


「と、とにかくコレ飲んで。おねーさんがおごったげるから」
「あ、ありがとうゴザイマス……」
 急いで買ったリプトンレモンティーを渡すと、震えた手でストローを挿そうとする。えっと、手がちょいと黒くなってるけど、これってもしかして……
「あのさーひよりん、もしかして、夏コミの原稿でもやってたの?」

 じゅるっ! じゅるるるるっ!! ずずずずずずっ……

 こくこくうなずきながら、超高速でテトラパックがへこんでいって、

 ぼこんっ!!

 うわー、一気に空気まで全部吸っちゃったよ。返事にしちゃ激しすぎるって。
「ぷはー……あー、ちょっと生き返りました。ありがとうございますー」
「いやいや、命が助かるぐらいなら紅茶一本安いもんですよ」
「うっ、わ、私、そんなにひどかったですか……?」
「今もちょいとやつれてるしね」
 さっきよりはずっとマシだけど、やっぱりボロボロなのは確かなわけで。
「さてはひよりん、徹夜で原稿やってそのまま学校に来たね」
「うう、図星っス……今日デッドラインだから、必死でノンブルと写植打ってました」
「大変やねー、この時期の描き手さんは」
 ひよりんのサークルはそれなりの規模だけど、本を出すペースもコンスタントで、描くお話もなかなか評判がいい。まあ、そこまでにはこうやっていろいろな苦労が
あるんだろうけどね。
「んで、今日は学校終わったら入稿? 結構大変だねー」
「いや、そうでもないんですよ。印刷所が西新井にあるから」
「西新井? ほー、そりゃまた近い」
 西新井ってのは糖武線の駅で、準急に乗れば糟日部から5駅と結構近い。
「学校帰りに行けるから、なかなか使いでがあるんですよ。印刷もかなりいい感じですし」
「あー、わかるわかる。4色カラーの表紙の発色がいいよね」
 なるほど、近場でいい印刷所ってのは作り手にとっては確かに宝物かも。
「でも、寝過ごさないようにしなきゃ……冬の時なんか、バスで眠っちゃってそのまま
池袋まで行っちゃいましたから」
「おおぅ、それは豪快な」
 そりゃー相当疲れてたんだろうね。今日も相当疲れてるみたいだし……大丈夫かな、ホントに。
「仕方ないから、印刷所に『閉店までには行きます』って電話して、そのまま乙女ロードでパワー充電しましたよー」
「さすがひよりん、転んでもタダじゃ起きない」
 こういう前向きなところが、マンガ描きとしての大事なエンジンなんだろうね。
「でもさ、そう考えると……糖武線って、かなーりヲタ要素強いよね」
「ヲタ要素って、鉄っちゃん関係ですか?」
「いやいや、そーゆーことでなく」
 そう言いながら、買っておいたアンバサホワイトにストローを挿す。
「西新井に同人誌印刷所があって、その準急2つ前の新越谷にはアニメイト。逆に1つ先の北千住にはたちばな書店があって、アニメイトは他にも柏や大宮にもあるでしょ。
それに、ゲマズも大宮」
「あー、確かに言われるとそうかも。それに、即売会会場もありますし」
「え? そなの?」
「西新井の準急1つ前にある草加に、徒歩0分でちっちゃい即売会会場があるんですよ。他にも、柊先輩の家の近く……ああ、加須にも1つありますね。それと大宮にもあって、ちょっと足を伸ばせば糖武宇都宮にもありますし、前は北千住にもありましたねー」
「へー、そうなるとどんどんカオスな路線って感じだね」
 さすがはひよりん、伊達にこみパの女王を目指してない。いや、ひよりんの場合は由宇と彩の合いの子って感じカナ?
「それでもって、アキバも一直線だし……おお、そうなると錦糸町と渋谷のアニメイトにも行けるね」
「そういえば、最近じゃ幸手や鷲宮やここらへんにも何かの聖地が増えたとか」
「……ひよりん、それは触れてもいいもんか私も正直迷ってたんだヨ」
「そ、そうなんですか?」
 そこは自分らの自主規制コードに引っかかるとゆーかなんとゆーか。
「そーなると、ひよりんの回復スポットもずいぶんありそうやね」
「そうっスね……帰りにいろいろ癒されてきますかー」
 そんな話をしているうちに、ひよりんの顔にだんだん生気が戻ってきた。
「おお、その意気だよひよりんっ! 夏コミ楽しみにしてるからねー」
「はいっ! あ、あと、戻ったら小早川さんと岩崎さんにフォローしなきゃ」
「あんまり心配かけちゃだめだヨ? 自分を追い込んでパワーを出すのもいいけどさ」
「ううっ、肝に銘じておきますー……」
 でもまあ、ここまで来ればあとは大丈夫かな。いい作品、楽しみにしてますよー。
 さて、そっか……糖武線はけっこーなヲタ路線か。そっかー、イイコト聞いちゃったぞ。くっふっふっふっ。

「ねーかがみかがみっ! 日曜になったら、北千住と草加と新越谷と柏と大宮にお出かけしないかいっ?!」
「うっ……な、なんかヤな予感するからよしとくわ」
「にょろ〜ん」
 あーもうっ! なんで察しちゃうかなー!
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