《ららららぶちーっ♪ らーららららぶちーっ♪》
……何をしてるんでしょう、こなたってば。
バイトから帰ってくるなりぴょんぴょんと跳ね回って、買ってきたらしい何かをキーボードの前に置いていったんですけど、これってなんでしょうか?
『何か買ってきたの?』
『あー、今度友達とボイスチャットをしようってことになってね。それでちょいといいヘッドセットを買ってきたんだよー』
私からのメッセージに気付いたこなたは、軽やかにキーを叩くと箱からヘッドホンがついたマイクを取り出しました。確かにしっかり作られたものみたいで、電源用のスイッチもついています。
ボイスチャット……おしゃべり、ですか。
私ができないことを楽しみにしてることに、なんだかちょっぴり寂しく感じてしまいました。
その14・こえがきこえる
Written by Kazuki Takatori
普段、私はこなたとIRCで会話していますが、それは文字だけのもの。私が思っていることをただ記号として表しているだけ……嬉しくもあるけれど、虚しく思うこともあります。
だけど、こうやってこなたが元気にしてる姿を見られるだけでも幸いなんですから、贅沢は言えませんよね。
《ちょっとっだーけっ♪ まってねっ♪ へいっ!》
何かを口ずさみながら、ケーブルを手にPCの後ろへまわるこなた。唄いながら作業してるんでしょうか?
「あなたにとどけスキスキテレパシー♪」
そう思うと、なんだか本当にこなたの歌を聴いてるような気がしてきます……って、こなたの……歌?
私はきょろきょろと辺りを見回しましたが、プログラムさんたちは何も立ち上がってません。サウンドがあるようなイベントもありませんし、一体……?
「さっきまーでーのみーらーくーるっ♪ かぁ〜むぅ〜ばぁ〜っくっ♪」
……こなた?
「さーてっ、接続も終わったし、とりあえずテストでもしてみますかねー」
そう言って座ったこなたのくちびるの動きと、言葉が……きっちり、合っているみたいです。
『あ、あの、こなた?』
『うん? どうしたの?』
『今、あなた唄ってたわよね?』
『あー、なんか楽しみで、ついついねー』
あははと笑うこなたの声も、私の耳に届く。これは……このマイクから聞こえてきたってこと?
『あのね、こなた。何かマイクに向かって喋ってみてくれない?』
『んー? ちょうどテストするとこだったし、いいよ』
そう打ち込むと、こなたはすうっと息を吸って……
「かーがーみーのーツーンーデーレェェェェェェェッ!!」
『はうぅぅぅぅぅっ?!?!?!』
う、ううっ、何故か画面の中にとっても大きく響いてきて、頭がくらくらします……
『ど、どしたの?』
『い、いえ、こなたの声が、とっても大きくて……』
『声?』
しばらくきょとんとしたこなたが、マイクに向かって言葉を紡ぎ出しました。
「おかあ、さん?」
初めてこの耳で聴く、こなたからの『お母さん』っていう言葉。
『ふふふっ。なあに? こなた』
それがついつい嬉しくって、私も笑顔で応えます。
「ホントに、ホントに聞こえるのっ!?」
『ええ。こなたの可愛らしい声、ちゃんと聞こえるわよ』
そう言うと、こなたのぽかんとした表情が緩んでいって……
「そんな、ホントに……あははっ、ホントに聞こえるんだっ!」
あわててヘッドセットをつけながら、嬉しそうに笑ってくれました。