「へー、なかなかよく出来てるキャラじゃない」
「あ、ちょっとかがみ、それはちょっと」
「どれ? うりうりうりっ」
な、なんでマウスカーソルで服をつまむんですかっ!
『きゃっ、きゃーっ!!』
しかも追いかけないでくださーいっ!!
ううっ……私のPC内人生、最大の危機です……
その13・ともだち
Written by Kazuki Takatori
うとうとしかけていたお昼前、画面の向こう側に誰かが入ってくるのが見えました。
この部屋の主のこなたに、髪を両横でまとめている女の子。そしてリボンをてっぺんで結んでいる女の子に、ほわんとしたメガネをかけた女の子……昨日から「友達が来る」って言ってましたね。
その子たちの姿が見たかった私は、今日一日「ですくとっぷますこっと」として振る舞うことになったわけですが……こう、同じポーズでいるっていうのは難しいものです。
相変わらず外の言葉は聞こえませんが、こなたが楽しそうに振る舞っているのを見るとこちらも嬉しくなってきます。女の子が出てくるゲームばっかりプレイしていたので、正直学校ではどうなのかしらと心配していたこともありましたから。
……うん? なんか、髪を両横でまとめている女の子と目が合っちゃいました。確か、こうなったらこなたが「新しく入れた『ますこっと』」と言ってごまかすはずですが……って、どうしてこっちに近づいてくるんですか?
女の子はマウスを手にすると、マウスカーソルがこっちに来て……いたっ! い、いきなりクリックでつつかれてしまいました。でも負けてはいられません。このまま直立不動で――いたっ! い、いたいです。先っぽがとんがってますから、カラスのくちばしにつつかれるみたいに……ん? 今度は私の服にするすると近寄ってきて、も、もしかしてっ?!
『きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
もうダメです! 直立不動なんてしてられませんっ!! ドラッグで服がつままれて、このままじゃ脱げちゃいそうですから、とにかく逃げましょうっ! 確か、どこかに逃げれば
よかったような……あっ、タスクバーの中でしたっけ! とにかく、そこに隠れてっと。
タスクバーの中に逃げ込むと、女の子は残念そうに苦笑いして、こなたや他の子はまた違う感じで苦笑いをしていました。もしかしたら、この活発そうな子がこなたがよく話題に出す「かがみ」ちゃんなんでしょうか?
その後はみんなでPS2のゲームをしていたり、夏休みの宿題をしたりして過ごして、陽が落ちかけた頃になって帰って行きました。
ちょっと不真面目だけど、みんなと一緒に楽しそうにしているこなたの姿は新鮮で、そんなこなたの面倒を見てくれるようなかがみちゃんやリボンの女の子、ほわんとした女の子がとっても頼もしく見えました。
『やー、お母さんゴメンね。災難だったでしょ』
みんなが帰ると、こなたが苦笑いしながらIRCに接続してきました。
『ううん、大丈夫。マウスで追いかけられたのにはちょっとびっくりしたけれど』
『あはははは……かがみってば『こなたにそっくりでかわいいわね』って興味持っちゃって』
だからといって、つつくというのはどうかと思うんですけど……
『でも、こなたの新しい一面が見れてよかったわ。みんなもいい子たちみたいで』
『そりゃそうだよ、私の大事な親友だもん』
えっへんと胸を張るこなた。その姿はとっても誇らしげで、とっても楽しげでした。
『中でも、かがみちゃん……よね、私を追いかけていたのは。あの子はこなたのこと、よく見ているわね。こなたがだらけるとツッコミを入れたりして』
『あー、もう学校でも遊びでもメールでもしょっちゅうだから』
『ああいう子が男の子でいたら、私も安心なんですけどね』
『ちょっ、お、お母さん、何言ってるの!』
こなたは顔を真っ赤にして慌ててますけど、私は結構真剣なんですよ? やっぱり、こなたには頼もしい子が側にいてあげてほしいですから。
「……そりゃ……かがみは好きだからいーけどさ……」
ボソボソ何か言ってるみたいですけど、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
ともあれ、こなたが平和な日常を送っているみたいで安心しました。