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● てけてけかなたさん --- その12・そうくん ●

 こそこそと、画面の影から外をのぞいてみる。
「くか〜……ぐお〜……」
 ふふっ、すっかり眠っちゃって。昨日は徹夜でしたから、よっぽど疲れたんですね。
「それじゃあ、ちょっと失礼しまーす」
 私はひとりごとを言って、そう君のデスクトップに降り立った。
 えっと、メモ帳は……立ち上がってませんね? はい、大丈夫ですね。



てけてけかなたさん

その12・そうくん

Written by Kazuki Takatori



 そう君のパソコンがついていて居眠りしてるとき。それが私のお掃除の時間です。
 いつもはこなたのPCにいるかルーターの中にいるかの私ですけど、やっぱり愛する人のPCの中も気になってしまうわけで。え、嫉妬ですか? 違いますよ。多分。きっと。おそらく。
「それじゃあ、今日もがんばってお掃除しますよー」
 エクスプローラーを立ち上げると、一昨日よりも1.5GBも増えています。これはきっと、2・3本は入ってるってことですね。それでは「プログラムの追加と削除」を起動して、と。
 両手でスクロールバーを引っ張ると、どうもそれらしいタイトルがありました。「悶絶ダイナミックおやじ」に「ぷる萌えーる☆アクトレスめいこ」……さ、最初のはちょっと怖いのでそのままアンインストールして、次のはどういうソフトなのか確認してみましょう。
 ……いえ、決してこなたに毒されたわけじゃないですよ? ちょっと興味があるだけですから。
 ボリュームを消して、モニタを省電力モードでここだけで見れるようにして、起動っと。
 むむっ? 小さい女の子が3人ですか? いくらそう君が「ロリコンでもある」と言っても、これはさすがに由々しき問題かと……って、きゃあっ?! こ、この子たち、つ、ついて……み、見なかったことにしましょう! セーブデータとかも無いですし、きっとまだプレイしてないんですよね?! 内容も知らないんですよね! だから今のうちにぽいぽいしちゃいましょうっ!
 私はあわててプログラムを閉じると、プログラムのフォルダを開いてからその2つのゲームが入ったフォルダを抱えて、ごみ箱へえいっと放り投げた。えっと、もうこれで大丈夫ですよね……ふー、恐ろしいものを見てしまいました。
 とりあえずお掃除はここまでにして、と……これからは、もう一つのお楽しみタイムです。
「新しい作品、どこまで進んだのかな」
 こっそりとドキュメントフォルダに入り込んであたりを見回すと、真新しいテキストファイルがちょこんと置いてありました。そう、これが私の目的なんです。
「この間は、女の子との出会いまでだったんですよね」
 ファイルを開くと、そう君には珍しいコミカルな表現で物語がつづられていました。
 それは、北国で一緒に過ごしてきた女の子との物語。生まれたときからずっと寄り添い、一緒に育っていく――というのが、今のところのお話なのですが、
「18年経って、しっかりと向き合ってくれたんですね」
 そう。この物語は、私とそう君が一緒に歩んできた想い出そのもの。
 小学校でガキ大将みたいな感じのそう君にからかわれて、いろいろつきまとわれて……でも、いつでも元気なそう君にあこがれていた頃のお話でした。
「もうっ、好きな子ほどからかいたくなるだなんて」
 男の子の語り口は、そう君の想いがいっぱいあふれていてくすぐったくなっちゃうほど。だけど、とっても力強くてあったかい、まっすぐな言葉。
「ありがとう、そう君」
 私の大切な、そう君との想い出。それをそう君も大事にしてくれて、形にして残してくれて。
「もう、きっと大丈夫ですよね」
 いつも元気でいようとしても、時々切なそうに仏壇を見るそう君。私がこの世界に降りるたびに見るその表情が辛かったですけど、もう、きっと大丈夫。
「あと何度、この続きを見られるかわからないですけど……楽しみにしていますから」
 私はそっとテキストファイルを閉じると、モニタをそのままにしてPCを後にしました。
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