| | novel

● てけてけかなたさん --- その11・ありぢごく ●

『くー……すー……』
「あーあー、お母さんってばぐっすり寝ちゃって」
 朝起きてPCを立ち上げると、お母さんが画面のすみっこでふとんにくるまって眠っていた。丸っこいフォントで寝息の文字が浮かんでは消えて……あーもうっ、かわいいなっ!
 多分、昨日の夜もお父さんのPCの"お掃除"で疲れちゃったんだろうね。お父さんってば何故か懲りないで何度も入れるんだもん、一生懸命エロゲだけを。
 ……ん? 今はお母さんが寝ていて、セキュリティも甘い。となったら、やることは一つしかない。
「ふっふっふっ……ちゃ〜んす」
 私は机の下にしまっておいたパッケージを手にして、目をきらーんと輝かせた。



てけてけかなたさん

その11・ありぢごく

Written by Kazuki Takatori



《くるくる……きゅっ、と。はい、出来上がり》
《ありがとうございます》
 あー、こう、おねーさんがショタっ子を可愛がってあげるってのもいいもんやねー。なんとなくひよりんの気持ちがわかってきたよ。
 というかクロノ、アニメと全然違うじゃん。あっちはA'sまで大人びてたけどこっちは純正ショタだ。
『くー……う、うーんっ』
 って、やばっ、お母さん起きちゃったよ。
『ふぁ〜、何か音楽が聞こえてるけど……って、こなた、またえっちなゲームをインストールしたの?!』
 起きて早々、お母さんはぷんすかぷんとばかりにこっちを見て怒り始めた。ええい、こうなったらままよ!
『ち、ちがうって。これはフツーのゲーム! ほら、今テレビでもやってるアニメの原作だよ!』
『えっ? あ、ほんと。よく似てるわね』
 ふぃー、テレ玉で2クール目突入してて助かったよ。
『ねえ、私もいっしょに見てていい?』
「う゛っ」
 お母さんはわくわくしながら言うけど、この先そーゆーシーンがあるにはあるんだよね。
でも、お昼を食べ終わって時間も有り余ってるし、今日はヒマって言ったから逃げ場は無いけで。
『い、いいよー』
『ありがとう、こなた』
 えーいっ、もうどうにでもなれっ! もうEドライブをやられるのも覚悟だ!
 ……そんなこんなで、お母さんと"同伴エロゲ"をすることになった私。そーゆーシーンは恥ずかしがって隠れてたけど、それ以外はずっと画面のすみっこで画面を見上げていた。
『お母さん、ちょっと聞くけど……もしかして、ハマッた?』
『ちっ、違うわよ! こなたが熱中してるから、つい!』
 私の言葉に、顔を真っ赤にして否定するお母さん。でも……「おかあさん、かぁ」とか「クロノくんいいわねー」ってIRCのログを見てると、全然説得力無いデスヨ。うん。
 このままお母さんの姿を見ているのもいいと思ったけど、時間はそろそろ夕方の4時半。
『うーん、ちょうどきりもいいトコかな。夕ご飯のお買い物に行ってくるから、そのままにしといてねー』
『えっ? あ、う、うん』
 私は机の上にある財布を手にすると、お母さんに手を振って部屋を出た……っと、自転車のカギ忘れてた。
 あわてて部屋に戻って、パソコンラックにあったカギをひったくったその時。
《リリカル、マジカル……》
《大切な想い出を……返してっ!!》
 なんで勝手にボイスが、とゆーか物語が進んで……って、ちょっ、何クリックしてるのさ!
 画面を見ると、お母さんはウインドウに手を伸ばして勝手に話を進めていた。
『あのー、おかーさーん』
『ひゃあっ?!』
 お母さんの肩をダブルクリックすると、びっくりした顔でこっちを振り返った。
『ふっふっふっふっ……よーこそ、こっちの世界へ』
『ちっ、違うの! 違うのよっ、! ちょっといい話だなって思って、違うのーっ!!』 そう全否定して、ウインドウを閉じるお母さん。でも、ちゃんとセーブしてから閉じていたあたり……ねえ? さて、今度はどんなゲームを用意しましょーかねー。
| | novel
Copyright (c) 2008 Kazuki Takatori All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-