きみにとどけ

※この小説は「ホントの気持ち、ホントのお気に入り」「プリンセス・ブレイブ!」と繋がった形ですので、そちらを読んでいるとより一層お楽しみになれるかと思います。




 まるで迫ってくるような、大きな山。
 駅の灯りでも頂上まで届かないような大きさで、どこまでも続いている。
 まあ、駅もちっちゃくてホームもちっちゃいから、灯りが届かなくても仕方ないんだけど。
「いやー」

 ひゅごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……

 私は吹雪に包まれた駅のカンバンを見ながら、大きくためいきをついた。
「まさか、寝過ごしてここまで来ちゃうとはねー」
 そのカンバンに書かれてるのは、

『会津高原尾瀬口』

「はぁ……」
 なぜか栃木を通り越して、福島まで来ちゃいましたヨ……




きみにとどけ

from "らき☆すた - Lucky☆Star -"

Written by Kazuki Takatori





「うん、うん……ごめん、途中でメールするから。ゆーちゃんは? ……そっか、元気なら心配ないね」
『圏外』って表示されてるケータイを弄びながら、電話の向こうのお父さんとしゃべる。
「とりあえず、途中で何か食べられたら食べるけど……うん、わかった。自分でレンジでもするよ」
 最初は怒られると思ってたけど、場所を話したら大爆笑されて拍子抜け。
 まあ、まさか夕方には糟日部にいたはずの人間が福島にいるとか言ったら、笑うしかないか。
「うん、じゃあまたあとで。ばいばーい」
 そう言って受話器を置くと、公衆電話からじゃらじゃらと十円玉が落ちてきた。
「電話、終わりましたか?」
「あ、はい。両替ありがとうございましたー」
 初老といった感じの駅員さんに、ぺこりとお辞儀する。
 駅舎の中はストーブが焚かれてて、なんだかのんびりした雰囲気。外の猛吹雪とは大違いだヨ。
「あのー……これで走れるんですか?」
「うーん、接続の電車がまだ前の駅だからちょっと遅れるけど、除雪車を走らせてるし大丈夫だと思うよ」
「この吹雪でも、ですか?」
 窓はガタガタ言ってて、窓枠には雪が積もってて、その雪がまた暴風に持ってかれて……うへー、よくこれで走れるな。
「だって、東京方面に接続する最終の電車だからね。走れなかったら苦情モノさ」
「……お疲れさまデス」
 確かに時刻表を見てみると「19:54 浅草方面最終」って出てる。それより1日の電車がたった19本って、1時間に6本は来る埼玉県民にはビックリですよホント。
「それにしても、糟日部から寝過ごすとはまた豪快だね。車掌が検札できなくて困ってたろ」
「いやー、昨日ゲームのやりすぎであんま寝て無くて」
「……近頃の女子高生って、みんなそんな感じなのかい?」
「多分私だけかとー」
 二人してあははーと笑ってるけど、こりゃ駅員さん呆れてるね。
 車掌さんに起こされたら終点のココまであと3つで「外は雪だし、この電車がそのまま終電になるから」って言われてそのまま乗って、んでもってお父さんに電話しようと降りたら降りたでノコノコと「電話するから十円玉両替してください」だもんね。そりゃー呆れられますヨ。
「ん? おお、接続の電車が来たみたいだね。そろそろ乗った方がいいよ」
 外を見ると、電車の明かりがゆっくりとホームに入ってくるのが見えた。
「あ、その前に、ここらへんにコンビニってあります?」
「うーん、一応あるけど、ここから3キロぐらいのところだからちょっと無理だね」
 こ、この吹雪で3キロは自殺行為……何より間に合わないや。
「そ、そうですかー。んじゃ、あきらめます」
 しょうがない、そこの自販機でホットレモンでも買っときますか。
「じゃあ、ありがとうございました」
「ああ、また寝過ごしちゃだめだよー」
 駅舎を出ようとすると、駅員さんがカラカラと笑いながら手を振ってくれた。
 うー、また現実になりそうだから反論できないっ! とゆーかひよりんにバレたら絶対にネタにされる! いくらネタ人生といっても、これはさすがに情けない!
「って、寒っ!!」
 ドアを開けて一歩外に出ただけで、雪の粒の大群が襲いかかってくるし!
 私は急いでマフラーを巻いて、ぱたぱたと電車に乗り込んだ。
「ふぃー、助かった」
 電車のドアは一箇所だけ開いていて、中は暖房が効いていてそんなに寒くはなかった。とりあえず、奥のほうがあったかそうだしそっちに行きますか。
 ゆっくり歩きながらまわりを見ると、電車に乗ってるのは私以外に3人ぐらい。座り放題ってことで、向かい合わせになっててやわらかい座席にぽふんと座る。ああ、ぽっかぽかだー。
 でも、帰った頃には11時か。明日が休みじゃなかったらホントにやばかったね。
 車両の渡り口の上にある行き先表示には「普通・新栃木」。ご丁寧に各駅停車だし、終着駅で嫌でも起きるってことで眠れそうだけど、さっきまで寝すぎて眠気なんて全然無い。
《毎度、野岩鉄道鬼怒川線『ほっとスパライン』をご利用いただきありがとうございます。この電車は糖武線直通、普通・新栃木行きです。大変申し訳ありませんが、大雪のため、定刻より少々発車が遅れております。発車まで、今しばらくお待ちください》
 あー、やっぱり遅れてるか。最終には間に合うだろうしのんびりしてようかなーと思ったんだけど、
「PSPもガッコでやって電池切れだし、DSは家だし。はー、ホントついてないなー」
 だからといってケータイにはゲームのアプリも入れてないし、メールしようにも圏外。八方塞がりでどうしようもない……って、カバンに何か入ってるや。
「あー、コレか」
 かがみが「結構前のアニメの原作だけど、なかなか面白いから読んでみて」って渡してくれたラノベが出てきた。でも、やっぱり活字は苦手ってことで今のところはパス。
《大変長らくお待たせいたしました。新栃木行き、発車いたします》
 そんなことをしているうちにドアが閉まって、がたんと電車が揺れて動き出した。
 やっぱり雪のせいかのろのろした走りだけど、トンネルに入ってすぐにスピードを上げ始める。この分なら、ちょっとぐらいの遅れでも大丈夫かな。
「それにしても、暇やねー」
 一人つぶやきながら、何もすることがなくてケータイをいじくる。
 ネットに接続しようとしても圏外。電話をしようとしても圏外。メールは……ログなら見られるか。かがみ用のフォルダをぽちっとな。

『明日はお昼に大宮のアルシェ口だから、遅刻しないで来なさいよー』
 夕方にもらったメールを見ていると、自然にかがみが人差し指を立ててうるさく言ってくるのが自然に思い浮かんでくる。
 ……明日のお昼、ちゃんと起きられるんかねー。
 今いる場所と帰りの時間を考えてそう思いながら、メールの履歴を順に戻していく。

『つかさから受け取ったラノベ、読んでみた? 今度感想聞かせてね』
 あいやー、全然読んでませんヨ。とゆーか明日聞かれそうな気がする……後で最初と最後だけ読んどくかね。

『宿題したかー? つかさが忘れてておろおろしてるんだけど』
 コレはこないだのやつやね。しっかり私も忘れてて、その後慌ててやったわけで。
 ……うーん、こういうメールのやりとりを見てると、ちょっと前でも懐かしくなるね。
 なんとなくそう思いながら、私はかがみとのメールのやりとりを読み返し続けた。

『今日はありがと。お昼のピラフ美味しかったって、つかさが喜んでた』
 コレは1ヶ月前にウチに来たあとのやつ、かな? みんなで泊まりに来ててピラフを振舞ったんだっけ。かがみも美味しそうにはむはむ食べてたんだから、素直に美味しかったって言えばいいのにさ。

『ごめん、明日は家の手伝いがあるからパス。でも、ヒマだったら来てみるといいわよ』
 秋祭りで巫女さんのお手伝いをするからって、遊びの誘いをパスしてきたときのメールか。お言葉に甘えて遊びに行って『巫女さんだー巫女さんだー』って抱きついたらデコピンの嵐だったよ……でも、凛とした巫女舞を見せてくれたかがみん萌えー。

『起きろー』『目を覚ませー』『もう昼だぞー』『ホントに寝ぼすけなんだから!』
 こ、コレは待ち合わせに遅刻したときの……いやー、現地についたらそりゃもう鬼の形相でしたヨ。でも、最後には「しょうがないわね」で済ませてくれるんだよね、かがみは。
 ひとつひとつのメールを見るたびに、その時あったことを思い出す。これだけでも思い出をめぐることってできるんだ。
 なんだか楽しくなって、そのままメールを読み続ける。

『文化祭お疲れさま。あんたのところの喫茶店評判だったわよ。ちっこいメイドさんがいるって』
 文化祭でコスプレ喫茶をやったときのものやね。あのときはゆーちゃんのクラスと競争したり、かがみに「かがみ様ー」って連呼して照れられたりってすっごく楽しかったよ。でも、もう学校生活じゃできないってのはちょっと寂しいかな……

『あんたがその道に進みたいのはわかるけど、もうちょっと考えてみてもいいんじゃない? いきなりすぎだし、迷ってたりしたらいつでも相談に乗るから』
 あー……なんとなく夜に寝付けなくて、かがみに進路相談したときのだ。日付も変わってたのに、夜が明けるまでずっと付き合ってくれたのがとっても嬉しかった。その後電車で会ったとき、二人して目の下にクマを作って笑ってたっけ。

『日焼け痛いー>< つかさも横でうなってる……』
 夏休み最後の思い出に、みんなでまた海に行ったあとのメール。はしゃいで泳ぎすぎて、セパレートを着てきたつかさとかがみにはキツかったみたい。ゆい姉さんの車に一緒に乗って暴走してても、気づかないでうんうんうなってたんだよね。

『明日会ったら覚悟しなさいよっ』
 あー……これは夏のお祭りのあとか。結局、ケーキバイキングでようやく機嫌を直してくれたけど、食べ過ぎに気づいて後で落ち込んだり。ホント、かがみってば怒ったり落ち込んだり、忙しいコなんだから。

 そして、たった2文字のメールに目が留まる。
『私も』
 二人で"約束"した次の日、授業の前にかがみが送ってきたメール。
 私が送った『大好きだよー』ってメールに、すぐ返事してくれたときのだ。

 ……こうやって見返すと、かがみとはホントにいろいろなことがあったんだね。


*   *   *



《間もなく、鬼怒川温泉。鬼怒川温泉です》
 ふと目を上げると、電車は私が見慣れないホームに滑り込むところだった。鬼怒川って
ことは、糖武線には入ったのかな。
 会津を出たときは猛吹雪だったのが、今は粉雪がちょこっと降っているぐらいでそんなに積もってもいない。それでも、雪は地元じゃあんまり見られないってこともあって珍しかった。
「一枚、おみやげ代わりに撮っとこっか」
 ケータイをカメラモードにして、駅のカンバンとホームに吹き込んでる雪をパチリ。これを送ったときのかがみの反応が見てみたいなー。

 ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ

「おわっ?!」
 び、びっくりしたー。いきなり震えだすんだもんさ。
 落としそうになったケータイを持ち直して、シェルをのぞき込むと……新着メールが3件か。というか、いつの間にかケータイの電波が復活してるし。
 誰かなーと思いながらメールを開くと、いつも見慣れたメアドが目に飛び込んできた。
『電話するって言ってたけど寝ちゃった? 見たらメールしてね』
 午後7時に送られてきたメールだけど、その頃にはぐっすり寝ちゃってたし、起きたら圏外だったわけでして。
『どしたー? 待ってるよー』
 午後7時半に送られてきたもの。明日行くところとか相談しようって言ったから、ずっと待ってたんだ……なんとなく、胸がちくちくする。
『連絡ください、待ってます』
 そして、8時過ぎに送られてきたメール……心配してるのか、突然言葉がていねいになってる。今頃、かがみは不安に思ってるのかもしれない。
 いてもたってもいられなくなった私は、急いで返信モードにしてさっきの写真を選ぶと、
『ゴメン、寝過ごして今こんなトコにいる』
 って打って速攻で送った。
 止まっていた電車ががたんと音を立てて、また走り出す。

 ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ

 それからまたしばらくして、ケータイに「メールを着信しました」って表示された。
『あんたってばもー。糖武日光で懲りなかったの?』
 はう、それはそれでまた痛い。
『あったかくて寝ちゃって。とゆーか、会津まで行っちゃった』
『あんたは首から目覚ましでも下げないと起きれないのかっ』
 打てば響くような、かがみからの言葉。
 見ているだけなのに聞こえてくるみたいな気がして、とっても心地いい。
『なんか心配かけちゃったみたいやね。ごめんごめん』
『電話しても圏外だし、メールしても返事が来ないし。どうしたのかなって思っちゃったわよ』
『すまんこってす』
『罰として、明日はひとつずつ、私とつかさの行きたい場所にもついていってもらうからね』
『それはケーキバイキングですかな? かがみさんや』
『う、うるさいわねっ』
 おー、図星ですよ図星。でも、かがみとつかさと一緒ならえんやこらだっての。
『照れない照れない。ちゃんとお付き合いしますよー』
 そんなやりとりに安心しながら、私はケータイのキーをリズミカルに押していた。
 ――やっぱり、かがみとおしゃべりするのって楽しいや。
 文字だけのメールでも、こんなにわくわくするんだから。
『ありがと。で、帰りはどのくらいになりそう?』
『さっきの放送だと9時45分に新栃木着だって言ってたから、10時半ぐらいじゃないかな』
 そのメールを送ってすぐ、またアンテナが消えていって圏外になる。今度はすぐに戻るといいなと思いながら外を見ると、電車は森みたいに木々に囲まれた場所に入っていた。
 今まで見たことがない風景が新鮮だけど、一人きりなのがなんとなく寂しい。
 雪だらけのあの場所にみんなで行ったら、かがみには怒られて、つかさはおろおろしていて、みゆきさんは駅舎に入ったらいろんな郷土知識を教えてくれそうな気がする。
 今度、みんなで一緒に来てみたいな。もしかしたらそれが、卒業旅行になるかもしれないけど。
 電車は森を抜けて、遠くにちょっと明かりが見えるぐらいの場所に出た。たぶん田んぼが広がっていてあんまり建物がないからだと思うけど、なんだか不思議な感じ。

 ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ、ぶぃぃぃぃぃっ

 あっ、返事が来たかな?
 キーを押して、返信されてきたメールを開く。
『10時半かー、了解』
 帰ったら電話でもするってことかね。駅についたらコンビニで何か買って、部屋で食べながらおしゃべりにしますか。
 だけど、終わったような会話でもなんだか物足りなくて、私はメールを打ち続ける。
『かがみもさ、今度一緒に来てみようよ』
『会津に? でも、すごいところなんでしょ?』
『うん。山がそばにあって、雪がすっごく深いし』
『まあ、終点がそこだったら寝過ごさなくて済むわね』
 か、かがみさん、今日のあなたの愛はちょこっと痛いデス。
『今度、つかさやみゆきにも話してみよっか。行くならみんなのほうがいいでしょ?』
『モチのロン。みんなで行ってこその旅行じゃーないですか!』
 でも、こうやってちゃんとフォローもしてくれるし……かがみは、やっぱり優しいよ。


*   *   *



《新栃木、新栃木。終点です。浅草方面へのお客様は、向かいのホームに停車しております区間準急・浅草行きにご乗車ください。本日も糖武鉄道をご利用いただき――》

 終点について向かい側の電車に行くときも、メールをする手は全然止まらない。会津よりも乗ってた人は多いけど、さっきよりも車両も多いし、座れないってほどじゃない。
 座りなれた座席に体をあずけながら、そのまま他愛も無いメールを続ける。明日のルートはとか、こないだ発売したゲームのこととか、ちょっとだけ、勉強のこととかも。
 しゃべる言葉じゃなくても、文字の言葉だけで『繋がってる』って気がして安心できるから。
『一人ぼっちじゃないんだ』って。

《間もなく、幸手、幸手です》
 おわっ、メールばっかりしてたらもう駅についちゃった。
『そろそろ幸手につくから、帰ったら電話するねー』
 って打って、送信……うん、完了っと。
 スピードを落として、電車がホームに滑り込んでゆく。車内は少し混んでいて、さすがに終電が近いんだなーって感じがした。
「すいません、降りまーす」
 そう言いながら立ち上がって、人のスキマをひょいひょいと通り抜けていく。いつもはうらめしいけど、こういう時にちっこい体ってやっぱり便利だ。

 ぷしゅーっ

 ドアが開いて、たくさんの人と一緒にホームへ降りていく。
 ホームから見上げてみれば、会津とは正反対の冬の星空。あったかく感じるのは、会津がすごく寒すぎたからか、それともかがみとのメールのおかげか……多分、どっちもだろーね。
 ケータイをコートの内ポケットにしまいながら視線を戻すと、ぼーっとしていたせいか、ホームにいるのは私一人だけになっていた。
「まあ、ゆっくり帰りますかー」
 ゆっくり歩きながら、改札のほうに向かっていく。とりあえず、帰りはサンクスに寄ってテキトーにお弁当でも買って――

「こなた、お帰り」
 へ?
「こなちゃーん!」
 え、ちょっと、何?
「お姉ちゃん、おかえりっ!」
 な、なんでお父さんにつかさにゆーちゅんに、
「ホント、あんたってば寝ぼすけなんだから……おかえりっ、こなた!」
 かがみまで、ど、どーして?
「ちょ、みんな……えっ、えぇぇぇぇっ?!」
 自動改札の向こうにいる四人の姿を見て、私はすっかりパニックになっていた。
「お父さんに『こなたのところに泊まりに行ってもいい?』って聞いたら『泉さんのところだったら大丈夫だろう』って言ってくれてね。つかさも連れて、一緒に来ちゃった」
「お姉ちゃんってば、こなちゃんのことをびっくりさせようって言うんだもん。私のほうこそびっくりしちゃったよー」
 いたずらっぽく笑うかがみに、のほほんと言うつかさ。ああ、もうすっかりやられちゃいましたよ。
「でも、メールをしてくれたんだからそれぐらい言ってくれても」
「そのメールをオレにし忘れたのは、どこのどいつかな?」
「ぎくっ」
 そ、そーいえばお父さんにメールするの忘れた……
「かがみちゃんから相談を受けて『だったら驚かせたほうがいい』ってオレが言ったんだ。まったく、オレもゆーちゃんも心配してたのに、連絡のひとつもよこさないで」
「あー、ご、ごめん」
「お姉ちゃん、大丈夫だった? 寒くなかった?」
「うん。電車の中にいれば大丈夫だったから。二人とも、心配かけてごめんね」
 まったくもう、という感じのお父さんと、心配そうに顔をのぞきこんでくるゆーちゃん。二人には今度ごちそうでも作ってあげて、機嫌を直してもらおう。
「お姉ちゃん、メールの返事が来なかったときからそわそわしてたもんねー」
「あ、当たり前でしょ? 連絡するって言ってた友達から連絡が無かったら、心配して
当然じゃない」
「おやおやかがみ様、そんなに私のことを心配してくれたのカナ? カナ?」
「う、うるさいっ! それと2回言うな!」
 くふふっ、かがみってば照れちゃってー。そっぽ向きながらこっちを見るのってかわいいなーもう!
「ま、そんなわけで、みんなで"こなたどっきりお泊まり会"のお迎えに来たわよ」
 そう言うと、かがみはえっへんとばかりに胸を張ってみせる。それと同時に、内ポケットのケータイがぶるぶると震え始めた。
 かがみの手には、ケータイがあって……もしかしてと思って、ケータイを開く。

『いつもドキドキさせるお返しよ。どう? びっくりした?』

 もう、びっくりってもんじゃないよ。さっきからほっぺたゆるみっぱなしなんだから。
「あははっ」
 そう言うかがみのほっぺたも、なんだかゆるんでるし。
「えへへっ」
 つられて、こっちまで笑っちゃうじゃん。
「たっだいまー!」
 私は抑え切れなくなって、自動改札を抜けるとみんなのもとへと飛び出した。
 
 
 ――声にしなくても、ちゃんと届くんだね。
 ――大好きな人への想いを、言葉にするだけで。
 
 
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