注)この作品は、Hunex/D3Publisher発売「ふれあい」のネタバレを含んでいます。
  ご覧になる方は、その点にご注意なさってください。









だいすきなおもいでたちへ

Written by Kazuki Takatori







「ぺたぺた〜、ぺたぺたっと」
 写真を空いたところに貼って、フィルムをかぶせる。
「らんららんっ」
 そして、次のページをめくる。
 まっさらな、白いページ。
 でも、これもすぐに埋まっちゃうよね。
 フィルムを開いて、また写真を手に取る。
 まだまだ、写真はいっぱいあるけど……うーん、どういう風に貼ろうかなぁ。
「ゆーほっ」
「はわっ!」
 耳元の声に、私はびっくりして飛び上がった。
「せ、せんぱいっ!」
 振り向くと、センパイが私の真後ろでかがんでいた。
「あはは、びっくりさせちまったか?」
「びっくりしましたよーっ!」
「ごめんごめん」
「ぶーっ」
「まあ、そう怒るなって。
 ほら、親父さんがこれをってさ」
「え……あ、孔雀草ですねっ!」
「ああ、お祝いにってな」
「わあ……嬉しいですっ」
「ここ、飾っておくぞ」
「はーいっ」
 センパイは、机の上の花瓶に孔雀草の花束をそっと挿した。
 そして、私の隣に座ってアルバムをのぞきこんだ。
「どうだ? 進み具合は」
「ちゃんとやってますよー」
「ふむ、どれどれ?」
 もう貼り終わった別のアルバムを、一つ手に取るセンパイ。
 それをぱらぱらめくって……あ、止まった。
 それに、なんだか顔が紅くなってる〜。
「ゆ、遊穂」
「なんです?」
「ひとつひとつ……コメント書くことはないだろ〜……」
 センパイが、写真の横に貼ってあるメモを指さした。
「だって、どういうことがあったかとか、大切じゃないですかぁ」
「だからって、詳しく書くなっ!」
「別に、キスしたって書いたって」
「俺が恥ずかしいんだよっ!」
「ぶー」
 センパイ、照れ屋さんなんだから。
「……ま、まあ、とりあえず今までのは許す。でも、今度からはもっと簡潔に――」
「やです」
「ぐぁ」
「これは、私とセンパイの大切な思い出なんですから」
「……わかったよ、好きにしろ」
「わーいっ」
 私はまた写真を手にとって、一枚一枚、しっかりとアルバムに貼っていった。
 そして、写真の横にはそのときのことをメモして貼っていく。
 一つずつ思い出して、それを書くのがなんだか楽しくて……ちょっとしたことでも、いっぱい書いちゃうんだ。
「ねえ、センパイ」
「なんだ?」
「明日も、カメラを持っていったほうがいいのかなぁ」
「うーん……まあ、持っていってもいいと思うぞ」
「そうですよね」
 まだまだ何も貼ってないアルバムが、私の横に何冊も置いてある。
「センパイが買ってくれたカメラ、たくさん使わないとっ!」
「ちゃんと、フィルム入れるの忘れるなよ」
「わかってますよ〜」
「そう言って、何度お前はフィルムを入れ忘れてるんだ?」
「はうっ……で、でも、明日のぶんのフィルムは、ちゃんと入れましたよ?」
「成長したなぁ、最初は何度も失敗してぐるぐる巻きになってたのに」
「せ、センパイっ!」
 こういういじわるなことを言うときもあるけど……センパイは、私にカメラのことを一から教えてくれた。
 それに、この世界のことも。
 私がほんの少ししか知らなかったことを、センパイはたくさん教えてくれた。
 だから……それをたくさん、たくさん思い出にしてとっておきたかった。
「まあ、明日は俺たち以外にもたくさんカメラを持ってくるだろうけど……」
「私は、このカメラにいっぱいとっておきたいんです」
「だよな」
 センパイが、私の頭をなでてくれる。
 とっても大きくて、あたたかい手。
 それで撫でてくれるのが、いちばん大好き……
「ところでさ、遊穂」
「はい?」
「あの写真はどうするんだ?」
「あの写真……あっ」
 私は、写真の束のいちばん下にある写真を手にとった。
 すっかり色あせて、かすんでいる写真。
 でも、私とセンパイの、大切な写真。
「この写真は……」
 私だけの思い出かもしれない。
 私が、勝手に作りだした思い出。
 でも……
「引退試合でも活躍できなかったからなぁ、俺」
「えっ?」
「最後までシュートも決まらなくて、後輩にも抜かれてたし……
 でもさ、遊穂の応援のおかげで、最後までがんばれたんだ」
「センパイ……」
 私がそうつぶやくと、センパイはにっこり笑って私のことを見てくれた。
「俺は、ちゃんと覚えてるぞ?
 遊穂は自分が作った思い出だって思ってるかもしれないけど、俺が覚えていることは、俺の思い出でもあるんだからな」
「…………」
「だから、この写真も大切な思い出の一つだろ?」
「……はいっ!」
「よーしよしよし」
 また、私のことをなでてくれる。
 センパイは気付いてないかもしれないけど、センパイの手には「力」がたくさんある。
 私のことをつつんでくれる力。
 そして、あたたかいきもちにさせてくれる力。
 私は、その力にひかれたのかもしれない。
 お兄様も、そうだったから……
「じゃあ、この写真は」
「ふぇ?」
 センパイが、いちばん最初のアルバムのページを開く。
 そこはもくじのページだけど、センパイはカッターを手にすると、
「こうやって、こうやって」
 四つ、切り込みを入れて……
「こうして……ほらっ、出来上がり」
「わあっ」
 最初の思い出の写真が、いちばん最初のページに……
「最初の思い出は、最初のページにってな」
「はいですっ!」
 そっか……
 センパイにとっても、私との最初の思い出なんだよね。
「センパイ」
「ん?」
「これからも、いっぱいいーっぱいっ! 思い出を作りましょうねっ!」
「そうだな……それと遊穂」
「なんですか?」
「センパイって呼べるのも、あと数十分だぞ」
「えっ」
 時計を見ると、もう十一時をまわっていた。
「はわわ……」
「今のうちに、いっぱい言っておくんだぞ」
「はーいっ」
 香坂遊穂は、今日までの名前。
 私はこの世界で、明日から矢萩遊穂になって、センパイ……ううん、俊平さんと、いっしょに暮らすの。
『力』は、もういらないから……
 思い出があれば、それが力になるんだから。
「それじゃあ……明日からは『あ・な・た♪』でいいんですねっ?」
「そ、それだけはやめろっ!」

 最初は、あなたにお兄様の思い出を重ねた、偽りのあこがれだったかもしれない。
 でも、あなたが私の心にふれてくれたから、
 私のことを、受け止めてくれたから……

「みゅふふ〜っ、あ・な・たっ♪」
「だから、だからやめろーっ!」

 今は本当に……
 本当に、あなたのことが大好きです。



[ end ]


[ あとがき ]

 こんにちは、鷹取かずきです。
 えーと……今回はちょっと趣向を変えまして、「SIMPLE1500シリーズ Vol.71 『ふれあい』」というゲームの二次創作を書いてみました。
 このゲームはプレイステーション専用の1500円均一ゲームの一つなのですが、案外しっかりしした出来で、なかなか面白い作りになっています。

 今回は、香坂遊穂シナリオの二次創作を書いてみました。
 ちょいと飛び道具(変則要素)があるキャラですが、結構楽しかったです。
 最初に誰を書こうかなぁと思いましたが、遊穂スタンダードな二次創作にしてみました。
 いや、本当ならもうちょっと壊すこともできましたが……とりあえず、こんな感じで。
 ちなみに、孔雀草の花言葉は「結婚」です。

 それでは、また。
 鷹取かずきでした。

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