注)このSSは、エニックス製「ドラゴンクエスト3 そして伝説へ」の
ネタバレが含まれています。その点をご留意の上、お読みください。
そのまま
Kazuki Takatori
陽が、登っていく。
洞窟から放り出たとたん、その光があたしたちの目を眩ませた。
ずっと闇が覆っていた世界に、差した光……
それが、あたしたちの旅の終わりを示していた。
何もかもの終わり。
昇りはじめたお日様を見て、あたしは笑ってみた。
気持ちいい、夜明けの風を受けながら。
全部終わったんだよね。
もう、あなたを縛る物は何もないんだよ。
もう、あなたを傷つける者はいないんだよ。
もう、肩書きなんていらないんだよ。
もう……
君は「勇者」なんかじゃないんだよ。
あんなに子供っぽかった君。
酒場に来たとき、ちょっとおどおどしていたよね。
仲間にしようとしても、みんな誰も相手にしてくれない。
君のことをバカにしているのもいたっけ。
でも、あたしが君の肩に手を置いたとき、君はニコッと笑ってくれたよね。
その笑顔が清々しくて、あたしは君と一緒に行くことにしたんだよ。
このときはまだ、弟みたいだった君とね。
武闘家、僧侶……二人の仲間に特訓されながら、君は強くなっていった。
最初は泣きそうになったりしたけど、あたしがちょっと髪を撫でてあげると、また笑顔になってくれたよね。
でも、そんなことをしなくても、君は彼らの特訓についていけるようになった。
敵も一人で倒せるようになったし……なんて言うのかな、風格っていうのが出てきたよね。
ちょっとずつ子供から卒業して「青年」になっていった君。
それが嬉しかったけど……ちょっと、寂しかったかな。
だって、自分一人で背負い込んだりするようになったし、あまり話してくれなくなったから。
君は、確かに「勇者」だったね。
とても強くなって……とても勇敢で。
でもね。
一人で抱え込むことはなかったんだよ。
オルテガ様のことだって、アリアハンに戻れないことだって……
あたしたちっていう仲間がいたんだから。
あたしたちだって、君とずっと旅してきた仲間なんだからねっ。
だから、そんな君を支えたくて……あたしは、賢者になったんだよ。
いっぱい勉強して、いっぱい修行して……ちょっと辛かったけどね。
それでも、君の手助けになりたかったんだ。
でも……本当に君の手助けになれたのかな。
それが、ちょっと不安だったりするの。
時々、君に甘えることもあったし、支えられたりもしたし。
暗い塔や洞窟で迷いそうになったりしたとき、君は元気づけてくれた。
地球のへそでたった一人冒険したときも、君は力強く見送ってくれた。
アリアハンに帰れないってわかったときも……一番辛いはずの君が、旅を続けようって言ってくれた。
だから、君のおかげでここまで来れたんだよ。
本当、成長したよね。
もしかしたら、あたしはもう必要なかったのかもしれないね。
でも、あたしは君が必要だったんだ。
だって、君のおかげであたしも成長できたし……君から離れたくなかったんだもん。
お姉さんとして。
それに……好きな人として。
もう「勇者」「賢者」じゃないんだよ。
一人の「男」と「女」なんだから。
今まで背負った荷を降ろすのには、時間がかかるかもしれないけど……
でも……気楽に行こうよ。
出会った頃みたいに、気楽にね。
今度はお互い、支えあいながら。
お互い、成長したんだから。
この土地での生活は、これから始まりなんだから。
「アリア」
「……なに?」
「戻ろっか、ラダトームに」
頭に手を乗っけると、君は照れたように赤くなった。
そして、久々の笑顔。
「そうだねっ!}
全てから解放された、昔のような笑顔。
だから、あたしも……
「えいっ」
昔みたいに、君の頭をそっとなでてあげた。
また昔のように……
笑顔でいこうねっ!
[ END ]
【あとがき】
こんばんは、たかとり和樹です。
原点回帰として、久々にDQ3のSSを書いてみました。
DQとして活動しなくなってから、もう3年になります。今でも同人誌は買ってますけど、めっきりこの物語は書かなくなりましたね〜。
今日、久々にDQの同人誌を漁っていたら書きたくなりました。
うちがメインカップリングにしている「女賢者×男勇者」のカップリングです(笑)。
しかも、賢者はおねーさん的存在……完全趣味入ってますね(笑)。
95年から、同人おねーさま方の存在で染められたのですが……今でもGoodなカップリングです(笑)。
それでは、またっ♪
初出 2000.05.12