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2008/06/13(金) 例えば、コミケを無くしたくなかったら。

はてなブックマークの情報 はてなブックマークに登録 はてなブックマーク数 2008/06/13 16:19 同人鷹取かずき
 今回は「例えば、コミケが無くなったら。」の続き……というか、補足記事になります。まだ読んでいない方は、そちらの方をお読みになってからこちらの記事をお読みください。

 当該記事の「■ 3.コミケ中止が他即売会に与えうる影響」でコミケが中止になった場合のミニ・シミュレーションを行いましたが、ここではもう少し踏み込んだ形で書いていきたいと思います。

 コミケが内部要因により中止になるとしたら「一般参加者が起こすトラブル」「サークル参加者が起こすトラブル」、希有な例として「スタッフが起こすトラブル」の三つがあり、そのどれもが中止、及びその後の貸し出し停止という措置が取られる可能性があるというのは前回書いたとおりです。それでは、今回はそれらがサークル側や即売会だけでなく、同人界にどういう影響を及ぼすことになるかというのに言及してみます。

「はてなブックマーク」のほうに即売会中止・禁止後についての反応がありましたが、コミケが何らかの事情で中止になった場合は多くの会場が使用できなくなる可能性があります。「あっとまーく・いんくりめんと」さんの「6/7 全国同人誌即売会連絡会勉強会 レポート」(http://blog.livedoor.jp/increment/archives/51439618.html)という記事から、気になる部分を引用してみましょう。

関東甲信越のコンベンションセンター組織(のようなものがあるようです)の会合でも、都産貿のことについては議案にあがっていて、関東甲信越の会場側には周知のこととなっています。


 実際「幕張事件」で幕張メッセが使用できなくなった際には「問題のあるイベントには貸さない」という理由を出されていて「同人誌イベントには問題がある」という認識を持たれてしまえば、会場側が貸し出しを渋る可能性もあり、それについては幕張事件直後に印刷所へと送付された緊急アピールでも故・米澤嘉博氏が言及しています。


 現在のところ、コミックマーケットは晴海の会場から断られた時点で、開催の目処の立たないまま終了するしかないという切迫した状況にあることを認識していただきたいと思います。また、コミックマーケットにおいて「事件」となった場合、他の即売会、会場へ大きな影響を与えることとなり、同人誌界そのものが危機的状況に陥る可能性はかなり高いと言わねばなりません。まさしく、この夏のコミックマーケット40は、同人誌界の存亡をかけたものと言ってもかまわないと考えます。

(印刷所へ向けて出された緊急アピール(「コミケット20周年記念資料集」より))


 これは逆に言えば「他の即売会がコミケ、他の即売会、会場へ大きな影響を与えること」にもなりかねないわけで、コミケだけでなく、オンリーや他のイベントであっても「ここが使えなくなっても、代替の会場があるから大丈夫」「たぶん大丈夫でしょ?」という感じでハメを外してしまえば、他のイベントもろとも道連れになることも十分あり得るわけで、実際都内・首都圏会場ではそうして使えなくなった会場(一時的含め)がいくつかあります。

 もしそうなったとしても、幕張メッセが使えるようになったり(あちらの経済事情という裏道ではありますが)したように、ある程度のスパンをおけばコミケ・同人誌即売会自体は再び復活することが出来る土壌も築かれる可能性は残されているでしょう。但し、それは一年、二年という短いものではなく、中止になった際の原因によっては五年、十年という長いスパンになることだってあり得ることで、決して楽観は出来ません。

「コミケの妖精」「イワエモン」こと同人評論家であった故・岩田次夫氏は、1998年8月のコミケ54で発火装置事件が発生し「Nifty-Serve FDOUJIN 同人誌フォーラム」(現在は廃止)でコミケ存亡についての論議があった際、以下のような言葉を残されています。


(前略)
ご理解いただきたいのは、「会場」という場は大変なものだということです。「コミケット」が中止に追い込まれれば、もう会場が貸せる可能性は大変に低くなります。ボランティアを大量動員できるからあの警備体制がひけるのであって、ガードマンを使えば凄まじいコスト増です、それに耐えられる即売会はありません。だからこそ、平和に移行したならともかく「事故中止」では「たいへんなこと」になるのです。

それでも10年のスパンでは復活は可能だと思います。しかし、その10年に失われるものを考えると、暗然たるものがあります。

(Nifty-Serve FDOUJIN 54th コミケ会議室 岩田氏の書き込み(01039番)より引用)


 岩田氏が述べている「10年に失われるもの」というのは「コミケ開催・運営のノウハウ」や「その間に過ぎていくジャンルの二次創作物」「即売会が無くなったがために生まれることが無かった一次創作物」「それらを見ることが出来ない自分を始めとした一般参加者」など、コミケや同人即売会にまつわる様々なものだと思います。

 長いスパンで復活したものの、その後が芳しくなかったものの例として、前出の幕張メッセでの即売会があります。
 同会場ではコミケの開催が中止されて以降、長らく同人誌即売会が開けない、かつ開ける雰囲気ではない時期が続きます。途中1994年10月2日にコミックシティin幕張1(仮)の開催が予定されますが、千葉県警から県条例を元にした警告を受けたことで赤ブーブー通信社内で混乱が起き、会場側などと協議した上で成人向け作品のゾーニングなどの方針を決定したにも関わらず当時の社長が中止にしたという事象が発生し(参考:「着せ替え総本山」(http://www.oersted.co.jp/~yav/sohonzan/shz.cgi?f=anime&n=499))、以降再び開催する機運がしぼんでしまいます。

 ようやく幕張メッセで即売会を開ける機運になったのは1997年。コミケ中止から実に6年弱を要しました。赤ブーブー出版社が1997年1月に「コミックシティin幕張1」を開催し、スタジオYOUも2月の「ゲームコミケin幕張1」を足がかりにして3月に「コミックライブin幕張1」を開催していくようになったのですが、各イベントとも大変な苦戦を強いられることになります。

 以下は、自分が幕張メッセで参加したイベントの概要と変遷です。
※記憶に拠るところもあるので、間違いなどありましたらご指摘下さい。
日付イベント名募集sp.実Sp.備考
97.02.16ゲームコミケin幕張2000sp.500sp.前後※イベントホール使用
97.03.16コミックライブin幕張110000sp.1000sp.前後※所有しているカタログで確認
97.08.31Good ComicCity28000sp.4000sp.前後※参加費1500円(?)
97.11.16★コミックライブin幕張10周年10000sp.2000sp.前後※参加費2000円
98.01.25★Good ComicCity310000sp.3000-4000sp.前後※参加費1500円(?)、新館使用
98.10.10★コミックライブin幕張11周年8000sp.2000sp.前後※参加費1000円+カットフルカラー
※★印はサークル参加。

 どのイベントも募集数と実数の落差が相当なものだとお解りになるでしょうが、参加費をいくら安くしたりサークルカットをフルカラーにしてみたりと大盤振る舞いをしても満了とはほど遠い状況で、多くは8館(98年以降は新館を含め11館)のうち1館のみ使用でした(「ゲームコミケ」のみ本館横の「イベントホール」を使用)。サークルが集まっても一般参加者が少ないという事態も起こったりして、その後赤ブーブー通信社は幕張から撤退。スタジオYOUも小規模なイベント開催に留まり、最近では同人誌即売会自体が幕張メッセでほとんど開催されなくなってしまいました。

 もちろん、東京からの交通の便の悪さや立地の悪さ、コミケ中止に対する会場への悪印象、東京ビッグサイトの開業等の影響も大きいでしょう。しかし、交通の便の悪さに関しては当時のビッグサイトも同じで(都バスが主要交通機関)、両即売会がいくら安価に設定してもビッグサイトでの両即売会以上に悲惨だった状況を見ると、この「6年間のスパン」が幕張という地での同人誌即売会を「今更」と大変難しいものにしてしまった可能性も否めず、94年に気運が高まっていた時点で即売会を復活していれば、もしかしたら違った展開があったかもしれないと思えるのです。

※実際、1994年の「コミックシティin幕張1(仮)」中止は草の根パソコン通信などでも騒がれたことで参加者側から強い反応が起きましたが、97年の復活の際はあまり反応が無かった(あったとしても中止後の推移からして懐疑的だった)という記憶があります。

 コミケが中止になり、長いスパンを経て復活した場合はその場の特殊性もありますし、求める人も多いことからそういった過疎などの悲惨な状況はにはならないかもしれません。ですが、中止時の状況によっては「安全性を確保するためにスペース数を減らしてセーフティーゾーンを作る」「成人向作品はゾーニングで完全隔離して複数人によるチェック、もしくは成人向作品の取り扱いはお断り」といった風に中止時の原因を取り除いた形で開催することが条件付けられ、従来の形でのコミケやその他各種即売会を維持することは難しいでしょう。

 同人誌作り・イベント運営のノウハウなどは失われることはないでしょうが、ここで何より忘れてならないのは『同人誌印刷所』の存在。コミケが中止になったり、その影響で小さな会場でも同人誌即売会が開けなくなったりすると印刷するべき本も無くなってしまうわけで、それまであった収入が無くなってしまって営業が立ちゆかなくなる可能性もあるのです。

 実情として、近年は同人誌印刷所が多く開業している裏で倒産・廃業が多くなっていて(この5年間で判明しているだけでも14件)、即売会のカタログなどで大きめの広告を出して羽振りがよさそうだった所でも突然倒産してしまったりと同人誌印刷所にとっては厳しい状況が続いています。例え中止したコミケ・即売会が時を経て復活したとしても、その間にいくつかの印刷所が無くなってしまったり、業態変更をしてしまう印刷所があったりと同人誌を作れる場が狭められる、もしくは失われることも十分にあり得るのです。

※以前オフセット本を出すために都内のある印刷所の方と話した際には「印刷代を上げればお客さんが減ってしまいますし、かといってフェアで安くなった時にばかりお客様が増えても利益は減っていまいますし、痛し痒しです。結構厳しいですね」ということも聞きました。実際、最近値上げに踏み切った印刷所もあるようです。

 同人誌即売会は、確かに自由な表現の場であり、多くの人がそれに自由に触れることが出来る場です。でも「自分だけがやっても大丈夫」「どうせ他人もやってるだろう」という認識で気軽にルールを破った結果、同人界にこういったダメージを与えて「作りたかったはずの同人誌・同人ソフト」「読みたかったはずの同人誌・同人ソフト」に触れられる機会がしばらく――もしかしたら二度と無くなってしまうことだってあり得ます。「分裂・細分化」「余所で開催」といった生易しいものではなく、最悪の場合は「ペンペン草すら生えない荒れ地」が待っている可能性だってあるのです。

「あまりにもネガティブな想像をしている」という方もいるでしょう。でも、実際1991年にはそんな暗い未来になりかけ、準備会や晴海会場などの多方面の努力でギリギリ回避し立ち直ることが出来たに過ぎません。一歩間違えれば、こんな悲惨な状況が待っていてもおかしくなかったのです。

 そんな暗澹たる未来に堕ちないためには、やはり即売会に参加する際には参加者一人一人がある程度危機に対する意識・安全に対する意識を身体的にも、また表現的にも持っておいたほうがいいと思います。前者なら、コミケで行われる一日数回の「一斉点検」なんかは良い例ですね。「自分には関係ない」と思ったことでも、何か異変を見つけるきっかけにはなるかもしれません。

「多くの変化を受け入れ、生き延びていくことが当面の目的ですが、そこを楽園に変えていくことは参加者全員で行っていかなければならないことです。なあに、それはそんなに難しいことではありません。ちょっとした人への気配り、ルールを守ること、常識を持つといったことなのです」とは前回にも書いた故・米澤氏の言葉ですが、即売会や同人誌に興味を持った人はカタログにしっかり目を通してみたり、各種サイトで同人界のことを学んでみたりしてみてください。そして、即売会や同人誌に興味を持った人が身近にいたのなら、そういった場の雰囲気や自らの経験を教えてあげたりしてみてください。重い歴史や危機のこと語らずとも、まずは即売会に参加する際のルールや心構えだけでも十分です。「知る機会・きっかけ」を少しでも増やすことが、即売会を楽しく過ごすための手助けになるはずですから。

 最後に、前回と重複する部分もありますが、同人のことを知るきっかけになりそうなサイトをご紹介させていただきます。
  • 「コミケ参加の基礎知識」さん
 http://human-dust.kdn.gr.jp/doujin/gocomiket/
  • 「同人用語の基礎知識」さん
 http://human-dust.kdn.gr.jp/doujin/index.shtml
 即売会の参加や同人誌に関しての基礎知識を知ることがてきるページです。
  • 「Comi-Navi」さん
 http://www.comi-navi.com/
 Archiveにある「コミケに参加するには必ず守ろう! コミケットルール」は簡潔にまとまっていてルールを知りやすいです。
  • 「A@」さん
 http://www.a-at.jp/
 http://www.comic-market.net/index.html
 コミケカタログのガイドや同人誌にまつわるコラムなどが掲載されています。
  • 「よつばのはて。」さん
 http://d.hatena.ne.jp/kokkuri/
 同人に関するコラムなど。「幕張事件」のことを知りたいなら「Get Wild '91』1991年 - 書店摘発〜表面張力〜幕張追放」は必見。

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コミケで手荷物検査を実施へ。

# ロスペド 2008年06月20日(金) 午後10時59分

気をつけるのが私らだけなら問題は無いかもしれませんが、肝心の「それ」を伝える大きな手段であるメディアがアレな現状 伏して耐えるしかないわけで、ブーム(そんなもの最初から無いわけですが)が去ることを願うのみ。

# 鷹取かずき 2008年06月27日(金) 午後11時54分

>ロスペドさん
 マスコミの報道はいろいろありますからね……最近のことを見ていると、思わずそう言いたくなるお気持ちもわかります。センセーショナルなのもいろいろ考え物ですね。


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