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2009/11/18(水) 同人誌感想記 第41回「凍りの掌 シベリア抑留 記憶の底の青春」

(これまで紹介した作品の一覧はこちらです。)

タイトル:「凍りの掌1 シベリア抑留 記憶の底の青春」「凍りの掌2 シベリア抑留 記憶の底の青春」
サークル名:おざわ渡辺   作者:おざわゆきさん
ジャンル:創作(歴史)  購入イベント:コミックマーケット76(2009.8.16)
傾向:おざわ氏の父が体験したシベリア抑留の回想録


 小学生の頃「おじいちゃん・おばあちゃんの戦争体験」という、その題のとおり祖父母が体験した太平洋戦争を作文にして提出する夏休みの宿題が出されました。小学3年生当時、自分はまだ存命だった祖父に戦争体験を聞くことにしたのですが、出てくるのは満州での平穏な生活のことばかり。あまり参考にはならないと思い、結局内地で疎開していた祖母の困窮生活を作文にして提出することに。どうしても祖父にそれを伝えづらく祖母に話したところ「ごめんね。おじいちゃんはシベリアに捕まっていたから」と謝られ「どうして捕まってたの?」と聞くと困ったように笑っていたのを、今でも鮮明に覚えています*1

 それから2年後に祖父は他界し、祖母も6年前に他界。その間に中学生、高校生になっていくうちに「シベリア抑留」という言葉を知り、軽く調べて「ああ、祖父もその一人だったんだ」と、あまりにも過酷な状況に「だから話したくなかったのかな」と思っていました。それからさらに年月は流れ、今年7月に開催された「よつばの。読書会5」で様々な同人誌を読んでいたところ本作に出会い、祖父も体験したというシベリア抑留の回想記ということで読ませていただくことにしました。

 おざわ氏が氏の父にシベリア抑留のことを取材しようとし、父が「思い出せんのよ……」と呟く場面から始まる物語は、父の学生時代から始まる。太平洋戦争末期になっていたその時代には仲間達が学徒出陣で出征していき、下宿先も空襲で被災してしまうという状況に。明日をも知れない日々の中で安息を求め過ごす中、帰宅した彼のもとに故郷から親がやってきて「出征だ」ということを告げられる。船と列車に揺られ辿り着いた場所は満州(当時)で、戦況の悪化により隊の仲間たちが次々と戦死していく。さらには日ソ中立条約が一方的に破棄され、ソ連軍が満州へと侵攻したことにより捕虜となったが、大きい船に乗せられ帰国できると喜んだのもつかの間、彼らが下ろされたのは未知の荒野・シベリアだった。

 シンプルにデフォルメされたおざわ氏の画風は、淡々としながらもその事柄を大事に描いていて、読んでいるこちら側に突き刺さるような鋭さがあります。爆撃により燃えさかり人が逃げまどう東京での光景に、仲間が手榴弾にやられ、頭部を損傷し戦死する場面、シベリアでの過酷な大寒波と、その最中での凄惨な強制労働。次々と力尽きていき、シベリアの大地へと埋められていく仲間達……語られた事柄を一つ一つ丁寧に構成していき、コマの中へと忠実に展開されていく物語は読んでいて思わず息をのんでしまうほどで、それとともに「どうして祖父は話してくれなかったのか」という二十年前の疑問が、おざわ氏の父の「思い出せんのよ……」という言葉とこの物語により氷解していくかのような思いに至りました。

 あまりにも重く、あまりにも悲しい出来事。まだ続刊中ということではありますが、日本の敗戦から復興の最中に起きていたことを語り継ぐ作品として、また今では語る方が少なくなってしまった当時の回想録として注目したい作品です。

*1 : 余談ではありますが、母に聞いたところ祖母にも母にもその様子は絶対話そうとしなかったそうです。


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