ミュージック・オブ・ハート



 以前紹介した映画に「陽のあたる教室」という映画があります。
 クラシック界で挫折し、生活のために音楽教師を始めた主人公が、いつしか天職としてそれを全うし、その中で作り上げた曲が育ててきた生徒たちに演奏されるという映画です。
 そして「ブラス」という映画も紹介しました。この作品も音楽……ブラスバンド(金管バンド)が題材になっていて、炭坑という現在衰退してしまっているコミュニティで繰り広げられる、人間模様を描いた映画です。
 さて。
 今回も音楽の映画です。
 前々回の「陽のあたる教室」はフィクション。
 前回の「ブラス!」は、セミ・フィクション。
 そして今回の「ミュージック・オブ・ハーツ」は、ノンフィクション……いわゆる「実際にあった話」を題材にした映画です。
 ……こういう順番になったのは、ただの偶然なんですけどね。



 主人公であるロベルタ・カスパーリ(メリル・ストリープ)は、夫・チャールズと突然離婚してしまい、二人の子供であるニック・レキシーを養うために、ロベルタはスラム街にある小学校で子供たちにヴァイオリンを教えていくことになります。練習曲である「きらきら星」を携えて……
 離婚によって情緒不安定気味になってしまった彼女は、学校でも浮いた存在になってしまい、子供たちにも当たってしまう始末。しかし、スラムで出会ったブライアンという男に惹かれるようになってから、彼女はだんだん変わっていくように。
 黒人の子供が親の命令で「白人の音楽などするな」と言われてできなくなったり、小学生たちの下手なバイオリンを聴いて「パパとママがゲロを吐く」と言ったことで親から文句が来たりもするけど、それもすぐに解決。初めて開いたバイオリンコンサートも、成功に終わります。
 10年後、最初は50人だったヴァイオリンクラスも、今では3つの学校で150人を教えるほどになり、それまでに教えた人数は1400人以上を数えるほどになりました。そして、個人でも教えるように……最初は蔑まれていた彼女の授業も、すっかり人気になりました。
 そんなある日、彼女がいつものように教室に来ると、沈痛な表情を浮かべた生徒たちに「先生がクビになった」「クラスが切られた」と告げられます。激怒したロベルタは抗議に行きますが、既に役所が通告してきたと校長に言われる始末。しかし、ロベルタはヴァイオリンコンサートで「絶対に負けない」と訴えて聴衆たち、さらにマスコミのの支持を得ます。
 そしてチャリティーコンサートを開くこととなり、特訓のために卒業生たちも練習に参加するようになりました。しかし、選曲したバッハの曲は生徒たちに不評な上、使用するはずだったホールも、配管故障で水浸しになって使用不能に……
 しかし、彼女の同僚であるイザベル(夫もヴァイオリン奏者)が「会場が決まった」という吉報を持ってやってきます。その会場の名は「カーネギーホール」。アメリカで「音楽の殿堂」と呼ばれる、巨大にして最高のホールです。
 コンサート当日、今まで彼女が教えてきた生徒たち、そして今消えようとしているクラスの生徒たちがカーネギーホールの舞台へ……客席は満員の聴衆で埋まり、奏者たちも見事なヴァイオリンの響きで聴衆たちに応えます。さらには、プロのヴァイオリン奏者であるマイク・オコーナー、マイケル・トゥリー、チャールズ・ヴィールJr.、アーノルド・スタインハート、カレン・ブリックス、イツァーク・パールマン、アイザック・スターンサンドラ・パーク、ダイアン・モンロー、ジョシュア・ベル(なんと全員本人!)も舞台に立ち、フィナーレである「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」を演奏し、それを見事に成功させます。

 そして数年後、彼女はいつものように子供たちにヴァイオリンを教えています。
 いつもと変わらない、ジョークを交えた口調で……



 この映画には、原作である「スモール・ワンダーズ」というドキュメンタリービデオが存在します。そのビデオを見た監督・ウェス・クレイヴン(代表作として「スクリーム」「エルム街の悪夢」がある)が絶賛し、映画化を決めたと言われるのてすが、その意欲が十分に伝わってくる映像とストーリーです。
 なんといっても圧巻なのが、ヴァイオリンの演奏は実際にその場面場面で演奏していたものをそのままレコーディングしていたということ。つまり、主演であるメリル・ストリープも、そして子供たちも実際にヴァイオリンを演奏していて、その中には実際にロベルタ先生に師事していた(またはしている)という生徒たちも半数以上いたというのですから、驚きです。
 その演奏のレベルも非常に高く、映像を見ながらだとさらに聴き応えが出てきます。なんといっても、その奏者たちの表情も素晴らしいものなのですから。



 最初は誰にも相手にされなかったロベルタは、「子供なら誰でもヴァイオリンを弾ける」と信じ、それを貫いたことにより、不可能を可能にしました。
 そして、千人を越える子供たちに「努力することによって、人生で何が可能になるか」とも教えてきました。その結果、彼らは彼女を助ける存在にまで成長したのです。
「努力すれば、必ず報われる時が来る」
 それが、この映画のテーマでしょう。

 映画のエンドロールになりますが、そこでその後の解説が入ります。


 1993年のこの催しは、3年間クラスを支えた。
 その後「オーパス118財団」が誕生。
 更に数年資金を集める活動を。
 この映画の撮影中に、クラスは再建された。

 ロベルタは今も同じ地区に、養女と住んでいる。
 ニックはチェリストに、レキシーは医学の道に。

 温かい支援と「オーパス118財団」の更なる発展を。


 彼女は、今でも変わらず子供たちにヴァイオリンを教えています。
 今でも「子供なら誰でもヴァイオリンを弾ける」と信じて。
 そして「努力することによって、人生で何が可能になるか」というのを教えるために。

 この映画では、観衆もそのことを教えられます。
 とにかく「努力することが大切」なのだと。

 一度、見てみることをおすすめします。
 演技・演奏もさることながら、この映画から溢れてくるパワーを、是非とも感じとっていただきたいです。

<公式サイト>
 http://www.iijnet.or.jp/ASMIK/M/MusicOfTheHeart/

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