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全国洋画系 |
実は、この映画は最初字幕無し版で見たことがありました。Band Peopleでバイトしている最中に、編集部の人たちが音楽評論家の方から送られた海外版のビデオを、仕事中に結構流していたんです。……自分は仕事もせずにずっとビデオ見てましたけど(ぉ
そして今回、改めてこのビデオ(もちろん字幕スーパー版)をレンタルして見てみることにしました。映画館、行けなかったんです(T_T)。
冒頭シーン、「死か栄光か」の曲とともに、小さな光が。それは炭坑夫のヘッドライトであり、また未来も予感しているように見えます。
サッチャーの炭坑閉鎖政策が続く中、炭坑街であるグリムリーも炭坑閉鎖の候補に挙がってしまいます。街のブラスバンドであるグリムリー・コリアリー・バンドの指揮者・ダニーはその事を気にも留めず、活動をずっと続けていました。団員たちもそんなダニーに引っ張られ、彼に意見も出来ずにいました。
そんな中、一人の女性……この街の住人だったグロリアがバンドに参加し始めます。幼なじみの男性はグロリアに興味を抱きますが、彼女は企業側の炭坑閉鎖の調査員でした。
バンドは街の予選を突破し、決勝へと進みます。が、炭坑の閉鎖が投票により決定してしまい、その知らせを聞くと同時にダニーは倒れてしまい、病院へと担ぎ込まれてしまいます。
バンドメンバーたちは落胆して辞めようとしますが、最後の演奏と言って、ダニーの入院する病院の前で演奏をします。彼の名が入った曲「ダニーボーイ」を。その演奏を聴いたダニーは、看護婦に伝言を頼みます。「テナーホーンが弱い」と。
ダニーの息子であるフィルは幾度もダニーを見舞いますが、妻子に見切りを付けられたフィルは錯乱、サッチャーの批判後、夜の炭坑で自殺未遂を……
病院に運ばれたフィルはダニーにバンド解散を告げ、ダニーも落胆してしまいます。が、グロリアは調査会社を退職し、その退職金をバンド費へと寄付します。
決勝の舞台である、イギリス・ブラスバンドの聖地、ロイヤル・アルバートホールへ行くために……
ブラスバンドの音楽により全体的に明るい雰囲気が漂っていますが、物語は相当やりきれない内容です。炭坑の閉鎖、家庭崩壊、生活の根本的な破壊、人々の疑心暗鬼……当時の世相も絡めて、かなりシビアに描かれています。
炭坑の閉鎖は産業の崩壊だけではなく、人と人の絆まで崩壊させてしまい、果てには自らの命を絶とうとし……そんな内容が劇中ずっと流れています。
実際問題、このようなことは当時のイギリスであったことです。エンドロールでもその実態は解説されており(「1984年以来、英国で閉鎖された炭坑は140。25万人近くが失業した」というテロップが流れます)、かなり考えさせられる内容でした。
ストーリーも決してハッピーエンドではありません。はっきり言ってお先真っ暗な状態です。しかし、それでも希望の光を見いだせる、そんな内容です。
特に、ラストの決勝会場は見所です。ダニーが聴衆に向かってスピーチをするのですが、その内容は産業崩壊とともに起きた家庭崩壊、生きる意志の重要さ、希望を失った人たち……はっきり言ってしまえば辛辣な内容です。
「彼らはすばらしい演奏をします。でも何の意味が?」という台詞には何故か考え込んでしまいました。けど、最後の台詞……曲のコールの事なのかもしれませんが「みんな、いいか。『威風堂々』だ」という言葉には思わずハッとさせられました。
人間、どんなことがあっても堂々としていよう。そんなふうに聞こえました。
強いメッセージとして、今でもそれが心に残っています……
曲中の音楽を担当しているのはグライムソープ・コリアリー・バンド……このバンドがある街も炭坑閉鎖の憂き目に遭いましたが、バンドは残り、全英チャンピオンシップにも実際出場し、優勝したことがあります。
曲中の音楽がしっかりマッチしていてとてもいいですね。冒頭の「死か栄光か」から、ラストの「威風堂々」の演奏まで、金管楽器の輝くような音色が耳に飛び込んでくると、全身の毛が逆立つような興奮を覚えます。
エピソードに音楽が絡まって感動できる部分が多々ありました。ダニーが入院している病院の庭で演奏する「ダニー・ボーイ」は、まるで父のようなダニーを慕う、しっとりとした音色と、役者の人々の表情に泣いてしまいました。すごく真に迫っているんですよ。曲に相まって……
そして、ロイヤル・アルバートホールで演奏される、序曲「ウイリアム・テル」のブライトな金管の音色と興奮する演奏者達と聴衆、今まで関わってきた人々の表情……それまでのストーリーが思い出されるようで、ちょっとこみ上げてしまいました。
演奏中のカメラワークもかなり大胆、かつ細やかです。「ダニー・ボーイ」のシーンでは、奏者一人一人の表情を大事に映し、ダニーへの思いを上手く表現していました。逆に「ウイリアム・テル」のシーンでは素早いカメラワークや俯瞰、ロングショットなどが有効に使われ、さらには「ダニーボーイ」での技法も活かした、演奏時の興奮を上手く伝える映し方です。これは是非、実際に映像を見て欲しいです。
ラストの「威風堂々」……これは絶対聴いて欲しいです。バスの中で、ゆったりと、堂々と演奏されるこの曲は、「ブラス!」のラストにふさわしいものです……
吹奏楽部を退部し、Band Peopleの仕事からも遠のいた今、この映画はいろいろな意味で衝撃的でした。最初は「ただの『メジャーリーグ』みたいな映画かな」と思っていたのですが、実際は全く違いました。
多くの不安と小さな希望を込めた結末……けど、決して後味は悪くありません。希望のほうが大きく感じるような気がします。この劇中の演奏、そして人物たちの表情を見て、そう感じました。
同時に「また、音楽がやりたいなぁ!」と思いましたね。それだけ、ショックが強かったです。
希望を感じて、いろいろ考えさせる……ほんと、いい映画でした。